08
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「、、、や、やだなあ、そんな人いたら夏祭りでみんなの写真撮ったりなんてしてないって。」 「ん。まあ、そうなんだけど。何もそんな勢いよく、」
無理に落ち着いた口調で言い直してみたところで、時はすでに遅し。 引き続き笑い転げるササヤンくんを見ながら、どうせこの一連のやり取りはなかったことにしてしまうのだからと、だんだん自暴自棄に陥ってきてしまう。
「わたしが好きだから。」 「え?」 「わたしが、ササヤンくんのことを好きだから。気になったの。ずっと、気になってたの。」 「え、あの、汐田さん、、、?」
怒ったみたいな顔をして、怒ったみたいな声で、何度も妄想していたロマンチックな告白とは程遠いシチュエーションで、わたしはササヤンくんに自分の想いを告げた。
しばらくビックリした顔をしていた彼は、落ち着いたトーンの声で話し出す。
「あのさ、汐田さん。オレ、」 「・・・・・」 「今はつき合ってるわけじゃないけどさ、」 「うん。」 「夏目さんのこと、たぶん好きだ。」
うん。そうだと思ってた。わかってた。
「だから、、、ゴメン。」
ブワッと湧き上ってきた涙が、目の中いっぱいに広がってきた。 やだ、泣いちゃダメだ、泣いちゃ。元からわかってたことじゃないか。
そして、もう、こんな、らしくないことは止めにしよ?また、こっそり、彼のことを見続けるだけに戻ろう。 右手をポケットから出し背中にまわすと、第二関節にひっかけていた指輪を中指の奥までギュッと入れる。
どうか彼が、わたしの詮索を、告白を、
忘れてくれますように。
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