02
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トン・テン・ツク・テン・・・
まだまだ明るい昼の二時過ぎ。
お祭りを控えた神社の前の参道では、安っぽいスピーカーからお囃子の音が鳴り響き、ずらりと並んだ夜店の店主達がこれから始まる書き入れ時に備えて遅い昼食を取っている。
目の前にいるこの胡散臭い男も、そんな夜店の店主の一人のようだ。
男は、未だに状況が飲み込めず呆然とするわたしの手首を掴むと、手のひらを無理矢理上に向けさせ、その上にコロンと指輪を乗せた。
「じゃーね、お嬢ちゃん。良い夏祭りを!」
チリリン・・・チリン・・・・・
ムッとするような湿度と温度を含んだ夏の風が前髪をかすめ、屋台に吊るされた涼しげな風鈴の音が響く。
気がつくと、わたしは丸っこい琥珀色の石がついた指輪を手に握りしめ、真っ昼間の参道で立ち尽くしていた。
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