僕らの夏が。 | ナノ



06 村上くんの場合。
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午前中は晴れていたというのに、突然の雨。

なんていうんだっけ、スコール?そんな感じの強い雨。グラウンドから大急ぎで用具一式と共に屋根の下まで引き上げると、バケツをひっくり返したような雨量が少しづつ小降りになってきた。

「続きどうする?」「すぐ止みそうじゃね?」なんてみんながダラダラ話をしているのを横目に、瀬田と二人でタオルを取りに部室に行くと、中から夏に似つかわしくないジャージの上着をひっかけた敷島さんが出てきた。

「どうしたの?」
「え?」
「いや、、、暑いのにジャージ。」
「ああ、レインコート代わり。ちょっとコンビニまで太いマジック買いに走らなきゃいけないんだけど、Tシャツ濡れると困るなーって。」
「あー、、、」

どうせ監督が気まぐれで「今欲しい」とか無理言ったんだろう。まだ雨止んでないのに、、、なんて思っていると、その考えが顔に出てしまっていたのか、敷島さんが慌てた様子で言い訳をはじめた。

「あ、あのね、監督は今すぐじゃなくてもいいって言ったんだけど、ほら、練習が中断されてる今が行き時かなって、自分で勝手に、」
「ちょっと待ってて。」
「へ?」

隣で話を聞いていた瀬田は、そう言うと急いで部室に入り部活用のウィンドブレーカを持って出てきた。ああ、なるほど。

「これ。」
「え?」
「こっちの方がでかいし、防水だから。」
「あ、、、ありがとう、瀬田くん!」

「ちゃんと洗って返すからねー」なんて言いながら、雨の中を走っていく敷島さんの背中を二人で見送っていると、2年のメンツがぞろぞろと部室に戻ってきた。

「あれ、お前ら、こっちにいたのかー。」
「うん、タオル取りに来てた。」
「えっとね、向こうの片付けは一年にまかせてしばらく休憩だって。」
「ね、さっき北校舎前にかわいい子いたよね〜、見た見た??」
「見た!眼鏡だった!大島さん系!」
「おい、ヤナ、てめーは夏目さんじゃねーのかよ!?」
「いやいや、夏目さんもかわいいけど、大島さんいいよね〜〜。」
「クラスが一緒になったせいで、余計に盛り上がってるんだろうな、こいつ。」
「なんだよ、大島さんはオレが最初に目つけたんだぞ!!」
「や、でも、まあ大島さんは本当にいい子だよ。」
「また、ササヤン、仲いいからってそんな上から発言!」
「えー、なんだよ、それー。」
「そうだそうだ、夏目さんといい、大島さんといいっ!!」
「おわあ!スパイクの泥投げるなよっ!!」
「くそう!!」
「落ち着け、ヤナ!」

相変わらずハイペースで進んでいくみんなの会話に笑いながらも、ついつい買い物に出た敷島さんが気になる。雨、止んだかな?ふと、横を見ると、瀬田も同じように空模様が気になるらしく、窓の外を覗き見ていた。

「止んでる?」
「ん?ああ、雨??もうちょっとかなあ。」
「そっか。」

そのとき、みんなにふざけてドアの外に追いやられそうになっていたヤナが、「あ!」と声をあげた。

「ん?どした??」
「ちょ、ちょ、ちょっとー!!あれ、敷島さんの横にいんの、加藤先輩じゃね!?」
「マジでか!?」

みんなで押し合いへし合いしながら部室のドアから外を覗きみると、コンビニのある側の校舎脇の道を、私服姿の加藤先輩が敷島さんを傘に入れて歩いてくるのが見えた。

おそらく、彼女が傘もささずにコンビニに買い物に行ってるのを、どのタイミングかはわからないが見つけて傘を差し掛けたのだろう。

「ウィンブレ、いらなかったかな?」と瀬田が苦笑いをしたけれども、オレはそんなことないと思う。


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