僕らの夏が。 | ナノ



05 迫くんの場合
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あれ?誰もいねーじゃん。

めずらしく早起きしてきたというのに、夏休みの校庭には人影がなく、、、って、なんか業者らしきオッサン達がスプリンクラーをいじってる。おおお、そうだった。今日、工事があるから午前中はグラウンド使えないって、午後からの練習って、言われてたーーー。

どうしようか、一度家に戻るか?いや、めんどくせーよなー、2時間くらいだし部室で寝てる?いやいや昼寝するには暑すぎるだろ、、、そんなことを考えながら部室棟までノソノソと歩いて行くと、部室の扉が椅子で抑えられて開いているのに気がついた。

「おおっ。同類がいたぜっ。」

ヤナか?寺島か??はたまたササヤンか!やっぱなー、オレだけじゃねーよなー。

「おいーっす」と勢いよく中をのぞきこむと、そこにいたのは予想外の人物、うちの学年のマネージャー、敷島だった。

「おいっす、迫くん。」
「お、おお、、、つか、お前どうしたん?練習午後からだぜ??」
「うん、だから今のうちにスコア表の整理しておこうと思って。迫くんは?」
「ええーと、、、」

どうしたもんかと言い及んでいると、「どうせ、昨日の監督の話聞いてなかったんでしょー。」と笑われた。くそう。

「みんな来るまで、手伝ってもらってもいいかなあ?」
「あ、ああ。」

スコア整理は正直めんどくさい。でも、悪い気はしない。というか、普段女っ気のまったくないオレ的には、女子と二人きりで作業とかちょっと嬉しい?かも?

「で、何すりゃいーの?」
「えーと、とりあえずそこに積んでるヤツを、、、」
「これ?」
「そうそう。それを表紙の日付順にダンボールに入れてって欲しいんだ。」
「はいよ。」

午前中のまだ涼しい風が、窓と扉を全開にした部室の中を吹き抜ける。

「これ、、、先輩たちが一年のときのヤツか。」
「うん。現役はもう誰も載ってないから見ないかなーって。」
「つか、スコア表自体見ねえだろ。」
「え?わたしけっこうよく見るよ??」
「マジでか!?」

すげーな。ほんと、敷島の野球オタクぶりには、たまに引くわ、、、
そんなことを思いながらペラペラと手にした古いスコア表を見ていると、噂の加藤先輩の名前が目についた。

「お、加藤先輩、一年からレギュラーじゃん。」
「ああ、守備も安定してるし肩も強いもんね。何よりあの足よ。あれだけ走れるんだもの、そりゃ一年だろうと使うでしょ!」
「、、、、、顔もかっこいいし?」
「え?」
「いや、こないだクラスの女子がさ、そんなこと言ってたからさ。」

これは、半分ウソ。クラスの女子が野球部の加藤先輩かっこいいって言ってたのは本当だけど、もしも敷島が先輩と付き合ってるのなら、釣れるかな?って思いながら言ってみた。

「顔、、、野球にまるで関係しない部分だから、正直ノーマークだったわ。」
「おいおい。お前はいったい、オレらをなんだと思って見てんだよ。」

不思議そうな顔をしながらそんな返答をする敷島を笑いながらも、やっぱり釣れなかったか、とこっそり舌打ち。

でも、まあ、全て野球に関することとはいえあれだけ大絶賛ってことは、悪くは思ってないってことだよな。

呼び出されて告白、されたんだろうか?
返事はなんて返したんだろう。

ま、オレには関係ない話だけどさ。


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