僕らの夏が。 | ナノ



04 佐々原くんの場合
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今、自転車の後ろに乗っけてる女の子。

クラスも一緒で、部活も一緒で、まあ、夏目さんや水谷さんほどではないにしろ、紅一点をまったく気にせず野球に打ち込んでる程度に変わり者。

「あっのさー。」
「んー?なになに??」

周りの音で聞こえづらいのか、敷島さんは風にたなびく髪を耳にかけると、ぐっと顔を寄せてきた。

、、、彼女のこういうとこ、ちょっとどうかと思うんだよねー。無自覚、天然。言っとくけど、オレら高2男子ですよ?

耳に息がかかりそうなほど近づいた顔にガラにもなく照れてしまって、なんて言い出すつもりだったか忘れたっつーの。

「あー、、、なんでもないわー。」
「あはは。なにそれ。さっき、寺島くんもそんなだったよ?」
「うっそ、マジで?」
「うん。わたし何かしたっけ??」
「いやいや、ほんとになんでもないんだけどさー。」

おーい、寺島ー。例の件?例の件を聞こうとしたわけっ??聞くならちゃんと聞けよっ、てオレもだけどさー、、、

信号が赤に変わったのを確認して、ブレーキをキュッと握る。

なんとなく振り返って見れば、色素の薄い少しくせのある長い髪を夕焼けで真っ赤に染めて、敷島さんは鼻歌なんて歌ってる。ああ、本当に真っ赤だ。そのキラキラと光る赤い髪を、それこそガラにもなく綺麗だな、なんてちょっと思ったりして。

「赤いね。」
「ん?」
「いや、信号がねっ!」
「あー、でも、そろそろ青だよ?スタート、用意!」
「あはは、なんか、まだシートノックやってる気分。」
「いやいや、佐々原くんは打球の反応も早いし、スタートダッシュは問題ないっ。」
「そう?ありがとっ。」
「問題があるとすれば、、、捕球後のスローイングだよね。スローイングの基本はステップ・アンド・スロー!必ずステップをしてから送球。それでね、佐々原くん、ファーストに送るときに少しボールが浮いちゃっててね、、、」

敷島さんのアドバイスはまだまだ続きそうだけれども、信号が青に変わったので苦笑いのまま走りだす。

結局、何も聞き出せなかったものの、僕らのマネージャーは無自覚天然、なおかつ野球以外に興味はなさそう。

オレらとしては、ありがたい限り?


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