僕らの夏が。 | ナノ



02 寺島くんの場合
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「で、結局、敷島さんってさー、加藤先輩と付き合ってんのかな?」

練習が終わり、汗臭い更衣室でササヤンが放った何気ない一言に2年全体がどよめく。

「そういや、引退試合のあとに呼び出しされてたよな。」
「え!ウソ!!そうなの!?敷島さんと先輩ってそうなの!?ショック!!!」
「ヤナ、、、お前、ほんっとに女なら誰でもいーのな、、、」
「なんだよ!そういう寺島だって、ちょっとショック受けてんじゃねーの!?」
「はあ!?なんでオレが!」
「いやー、でも、オレは正直敷島が3年の彼女とか、やだわー。」
「んー。まあ、そんな気持ちもわからなくはない。」

ふーん。なんだかんだ言っても、うちの学年はみんな敷島のことが好きだよな。同じ学年で入部からずっと一緒ってこともあり、なんとなく「彼女はオレらのマネージャーだ!」という意識が強かったりするのかもしれない。

「だよねー。マネージャーに手出すとか、正直止めて欲しいっつの。なあ、瀬田は何か聞いてないの?」
「、、、え?オレ!?」

自分とは関係ない話だと気を抜いてたらしく、いつも冷静な瀬田がめずらしく動揺してるのがちょっと面白い。

「い、いやあ、どうだろ?、、、呼び出されてたのはオレも見たけど、そんな雰囲気じゃなかったけどなあ。」
「や、そうじゃなくてさー。お前が一番仲いいから、本人からなんか聞いてないかなーって。」
「、、、いや、別に。なんも。」
「ふーん。そうなん?」
「ああ。」
「ふーん?」


と、そのとき、更衣室のドアがコンコンとノックされた。

「おーい。まだ着替え終わらないのー?ラーメン食べに行くんでしょー??」
「あ。ゴメン!もうちょいー!」

突然の噂のご本人登場に、みんなが明らかに動揺する。

「さ、さっきの話、聞こえた、かな?」
「や、大丈夫じゃね?」
「あの声の感じからして、聞こえてなかったとみた。」
「よし!」

ヒソヒソ声で確認をした後、ガラっと更衣室の扉を明けると、カバンを背負って勢い良く廊下に出る。

「おまたせー!」
「よーし、ラーメンラーメン!」
「オレ、餃子もー。」

がやがやと出てきたオレらを笑顔で迎え、「わたし、半チャーハンー!」とか言ってる敷島のことを、まったく気にならないと言ったらウソになる。

「なあ、敷島。」
「なに?寺島くん。」
「・・・・・」
「ん?」

みんなは先に昇降口に歩き出したため、更衣室前にはオレと敷島だけ。首をかしげて次の言葉を待つ彼女に、オレはいったい何を聞くつもりだったんだ?

加藤先輩とはどうなった?

って、それじゃまるでオレが 敷島のことを好きみたいじゃねーか!ないない!さっきササヤンも言ってたけど、マネに手出すとか、ありえないから。うん。

「な、なんでもねーわ。」
「あはは、なにそれ。寺島くん大丈夫??」

ケラケラと笑いながらみんなの後を追う敷島の背中に、苦笑いで「うっせーよ。」と悪態をついた。


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