僕らの夏が。 | ナノ



08 再び瀬田くんの場合。
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カキーン!!

「ライト、まだスタート遅いっ!!!」

雨上がりのグラウンドで、今日も続く敷島さんのシートノック。相変わらずヤナがゲキを飛ばされているのを、トンボで水たまりを埋めながら眺めていると、同じく作業をしていたササヤンが近づいてきた。

「良かったじゃん。不穏な空気が、瀬田のせいじゃなくって。」
「まーね。でも、正直ちょっと意外だった。」
「そうそう。逆だとは思わなかったよなー。」

実は、オレたちの「加藤先輩が敷島さんに告白して二人は付き合っている」という予想はハズれていて、「敷島さんが告白をして、加藤先輩が受験を理由に断った」というのが正解。何人かが目撃していた試合の後の呼び出しは、彼女が告白の返事をもらうためのものだったらしい。

そして、断られたことで気持ちがスッキリしてしまったた敷島さんとは裏腹に、加藤先輩が彼女のことを気にするようになってしまい、だからといって付き合うかというと、そういうわけでもなく、てめえはいったいどうしたいんだよってな複雑な状況になっているらしい。まあ、敷島さんにその気がなくなってしまっているので、実際はそれほど複雑でもないのか?

当の本人曰く、「予選敗退で気分が盛り上がって、つい」してしまった告白らしく、今思ってみるとそれほど好きでもなかったかも?とか。なんなのそれ、敷島さんはいったいいつからそんな小悪魔に、、、

部室で聞いた、あっけらかんとした彼女の言い草に、全員が呆れたようなホッとしたようなそんな気分になったあたりで、ようやく夏のにわか雨が上がり練習再開となった、というわけだ。

ま、なんにしろ、

「なんにしろ、うちのマネージャーに手出すなっつの。」
「そうそう。今更おせーっつの。な!」

と、そこで、水はけ作業に従事ていた2年に総じて呼び出しがかかる。

「佐々原くん、迫くん、あと瀬田くん、村上くんも交代!!」
「「「「おーっす。」」」」


敷島さんの打球は、かなりコントロールがいい。

指示通りの場所に落ちるし、ちょうどいい距離だけ転がる。あれを全て狙って打っているのだから大したもんだ。

そして、何よりも素晴らしいのが、シートノック最後のキャッチャーフライ。

マウンドにいる村上をしっかり見据えたまま、適度な回転、適度な高さで綺麗に後ろに打ち上げる。キャッチャーマスクをはずして眩しい青空に目を細めながら、ものすごく取りにくいのに、決して無理ではないという絶妙の位置に落ちてくるその打球をミットに収める。

よし、今日もいい感じ。そして、、、

「はい!おしまいっ!」

練習最後の彼女の笑顔を一番近くで見れるのが、
このポジションの最大特権だ。


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