27 予定はそうじゃなかった。
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ぼんやりとLINEを見ていた携帯が手元で震え、メールが届いたことを伝える。
「、、、おっせえよ。」
放課後、何をするわけでもなくダラダラと今日はどこ行く?なんてしゃべっているバカどもの後ろで、帰り支度を整えたまま座っていたところ、オレの独り言に反応してトミオが振り返った。
「ん?ヤマケンなんか言ったかー??」 「いや、なんでもねーよ。」 「何?メール??」 「だから、なんでもねーっつの。」
成田愛からのメール。 どうやら今日は、約束通り登校したようで。思った通り進級が危ういとか言って焦ってやがる、ほれ見たことか。でも、まあ、がんばる気にはなれているよーで。とりあえずはいーんじゃねーの?
不自然なほど絵文字で飾られてるくせに堅苦しい文章が、どうにも彼女らしくてついつい笑ってしまう。きっと、これだけ打つのにも相当な時間がかかってるんだろう。
「なーに笑ってんだよ。気持ちわりいなあ。」 「うるせー。笑ってなんかねーよ。」
どれどれ?なんて言いながら画面を覗きこんでくるトミオが、「ああ、愛ちゃんか。」なんて普通のテンションで言うのでビックリする。
「は?あいつが帰ってきてること知ってたのかよ?」 「ん。サヤカちゃんにこないだ会ったときに聞いたぜ。なあ?」
それまでジョージとじゃれていたマーボが、トミオの問いかけにいつものテンションで乗ってくる。
「なになに!?愛ちゃん?どしたの?もう学校来てるって??遊ぼうって!??」 「お前ら、、、知ってたなら言えよ。」 「はあー?なんっでいちいちヤマケンごときに話さなくちゃなんねーんだよっ。」 「ふん。別にいーけどな。」 「まあまあ、で、なんだって?」 「や、今日から学校行きだしたって。今終わったとこ、だと。」 「へえ。で、迎えに行くの?」 「はっ、なんでオレが迎えに行かなくちゃなんねーんだよ?」 「いーじゃん。音女の校門前とかで待ってよーぜー。」 「んな恥ずかしいこと、死んでもできるかっ、アホらしい。」 「ふーん、じゃ、、、」 「あ、こら!止めろ!!」
トミオが座っていたオレから携帯をひょいっと取り上げると、慣れた手つきでアドレスを呼び出し耳に当てる。
「あ、もしもしー?オレオレ、トミオ!そうそう久しぶりー。」 「おいっ!」 「もうがっこ終わったんでしょ?今から何か食いに行こうぜ、って、」
そこまで言うと言葉を切り、トミオがこちらを見てニヤリと笑った。
「ヤマケン、が。」 「言ってねえ!!!」 「そうそう。じゃーさ、前に行った駅前のドーナツ屋で、うん。そだな。じゃ、また後でー。」 「・・・・・」 「ほい。返す。」 「お前なあ、、、」
携帯を差し出してニヤニヤと笑うトミオを睨みつけていると、いそいそと支度をし終えたマーボがガシッと肩を組んできた。
「いーじゃんいーじゃん!さ、行こうぜー。愛ちゃんとおー茶!」 「なんっでだよ!」 「なーに?お前、愛ちゃん独り占めする気だったわけー?」 「そんなんじゃねーよ。」 「じゃ、いーじゃん。待たせちゃ悪いし、早く行こうぜ。」 「、、、ああ。」
くっそう。別にいいんだけど、よくねえ。
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