11 正直、ちょっと恐い。
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「それはまずいだろ。」 「やっぱ、まずいかな?」 「どう考えてもまずいって!!」
ついつい大きな声が出てしまった俺の方をちらりとも見ず、カウンターの上にあるMacBookをカチカチといじりながら、成田がフン、と鼻を鳴らした。
「俺的には、いっそこのまま止めちゃえばいーのになって、ちょっと思ってる。」 「はあ!?何言ってんだよ、だって、」 「音楽やってるときの愛は、正直、ちょっと恐い。」 「・・・・・」 「お前みたいに、頭でわかってやってるヤツは別にいいんだよ。でも、愛のはなんていうかさ、理性とかがまったく及ばないところでやってるというか、、、」 「まあ、、、言いたいことはなんとなくわかるけど。」 「そうか?とにかく、そこを伸ばすことによって、いろんな物が犠牲になりそうな気がするっていうかさ。」 「芸術家と気狂いは紙一重だよね。」 「おまっ、人の妹捕まえて気狂いってなんだよ!!」 「んー。愛ちゃんは大丈夫だと思うけどね。絶妙のバランスで持ちこたえそう。」 「、、、実は今日、昼間に店に来てたんだ、あいつ。髪切りに。」 「あれ。そうなの?」 「ああ、けっこう元気そうだったよ。まあ、学校にも行ってないみたいだから、なんとも言えないけど。」
その後、二人でなんとなく二の句を継げずに押し黙ってしまう。
ふーん。そうか。元気そうなのか、、、
と、その時、後ろからお店の女の子に「成田さん。そろそろ予約の時間です。」と声をかけられた。
「お、じゃあ、俺そろそろ帰るわ。」 「ん。心配してくれてありがとな。」 「はいはい。また、仕事あったら連絡する。」 「わかった。つか、次の予約、いつもだいぶ遅れてくる子だからもうちょい大丈夫だぜ?」
お言葉に甘え、お店の女の子が淹れてくれていたコーヒーをグビッと飲み干していると、店の階段を上がってくる少年の明るい髪色が目についた。そして、あの特徴的な色の学ランは、海明学院?
「あれ、あの子確か、、、」 「ん?珍しいな、時間ピッタリ。」 「えーと、、、、、あれって山口くん?」 「へ?なんでお前が知ってんの??」
おいおい。少年。兄とも繋がってんのかよ?
「、、、愛ちゃんの発表会、見に来てたよ?あの子。」 「えええ!?愛の友達??マジで!?あいつ、そんなこと一言も言ってなかった、つか、女子高の愛が海明の男子とどういう知り合い?、って、もしかして合コン?合コンなのか!?あの小さくて可愛かった愛がとうとう合コンに!?というか、すでに彼氏とかそういうこと!?山口くんイケメンだもんなあ、おい!俺だって金髪にすれば、今でも全然いけるぜ?なあ?な、なあ??」
ちょっ、おまっ、動揺し過ぎ。 しょうがないので動揺しまくる兄に代わり、開いた扉に向かって苦笑いで挨拶。
「いらっしゃいませ〜。」
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