04
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「あれ?まだ残ってたの?」
放課後、昼休みにやり残した資料作成(結局、2年の二人は全く役に立たなかった!!!)を一人でボゾボソとやっていると、ガラリと生徒会室の扉が開いて、綿貫先輩が入ってきた。
「え、、、と、もうちょっとで終わります。」
作業に集中していたせいで気がつかなかったが、すっかり暗くなった窓の外ではバラバラと大粒の雨が降リ始めている。
「雨降ってきちゃってさ。確かここに置いてあったと、、、」
先輩は、生徒会役員の私物がうずたかく積まれているロッカーをガサガサとあさると、水色の折りたたみ傘を発掘する。
「あったあった♪」
機嫌良く鼻歌なんて歌っているが、なんだか様子がおかしい。なんというか、、、なんていうの?綿貫先輩にしてはテンションが高過ぎる。何かあったのかな、なんて思いつつもそんなことを聞くような間柄でもなし。
ああ〜〜〜〜〜!!もうめんどくせえ!!! んなもん、オレが気にしてどうすんだ。とりあえず雑談か?今必要なのは雑談なのか?
「、、、あの」 「なによ?」 「足、速かったんすね。」 「ん。中学のときは、陸部で長距離走ってたからね。区の代表に選ばれたりとかして、けっこう速かったのよ。」 「正直驚きました。3位って。」 「「・・・・・」」
めずらしく饒舌だった綿貫先輩は急に無言になると、おもむろに椅子を移動してオレの目の前に座り、ホチキスを手に取って作業を始めた。
、、、え?オレなんかまずいこと言ったのか?特に実のあることは何も言ってねーよな?何急に黙ってんだよ。
廊下から部活終わりの生徒のはしゃいだ話声が時たま聞こえる以外は、雨の音と、手元のホッチキスのカチッという音だけが響く。
諦めの境地で無言のまま残りのプリントを綴じ続けること数十分。生徒達がほとんど下校し、雨音だけが響くようになった頃にようやく資料作成が終わった。
気まずい時間に終止符が打てる安堵感から、フーッとため息をつくと、綿貫先輩は座ったまま両腕を組んで上げ、ぐぐっと伸びをするとこちらを見て小さく笑った。
「終わったよ。塚原くん、一緒に帰ろうよ。」 「え、あ、、、はい?」
おいおい、相手は生徒会のクールビューティーと名高い綿貫先輩だぞ?クールを通り越して、どちらかというと無愛想なくらい。頼まれてもいないのに後輩の仕事を手伝うような人でもなければ、気さくに一緒に帰ろうなんて言う人でもない。
そして、先輩の笑顔といえば、上から目線でニヤリと笑うところしか見た事ないわけで。
こんな、、、こんな心細そうな笑顔というか、泣き顔に近い顔見せられて、どうしろってんだよ?
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