タイムクエイク | ナノ



03
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うちの学校のマラソン大会では、距離の長い男子が先にスタートする。
女子はその後かなり遅れてスタートする上に、校庭の外周以外はコースが違うため、走っている間はあまり顔を合わせることはない。

一緒に走っていた春はけっこう早い段階で死にそうな顔で「お願いですから先に行ってください」ってなことだったので、置いてきた。下手に並走して春のペースで走れないと余計に苦しいだろうし。

無表情の双子は、何やらくだらない賭けをしていたらしく、そこそこ上位でゴールしたっぽい。悠太はともかく、あの祐希まであれだけ走れるとは意外。

で、遅くもなく、速くもなく、無難な感じでゴールしたオレ。

ドッドッドッと早鐘を打つ心臓の音が体内に響き渡るのを聞きながら、荒い息を整えようと腰に手を当て深呼吸をしていると、ワッと歓声が聞こえて、トラック内に女子のトップが入ってきたことに気がつく。女子も上位の運動部組はけっこうハイペースなんだな、と、ふと顔を上げると信じられない光景がそこにはあった。

1位、2位は、着ているジャージからして、陸上部と、バスケ部。そして、なんと3位にゴールしたのは、体育の授業用のジャージ着用の一般生徒。さっきまで、オレと一緒に資料を運んでいた綿貫先輩だった。

マジかよ。さっきのあれ、本気だったんだ。
ゴールを走リ抜けたフォームが、満身創痍で走る他の生徒と違い、彼女が書く文字のように模範的で美しかった。


ゴール後、かなり苦しいのか、いつもの涼しい顔が少し苦痛に歪んでいる。と言っても、見慣れていない人間からしたら全然無表情のままだと思うけれども、オレらからすればあの先輩が!?という感じ。つか、汗をかいてるところすら、初めて見たわ。少し乱れた前髪から、ポタリポタリと汗が落ちているのを信じられない気持ちで眺める。

そんな様子を驚きの顔のまま凝視していたオレに気がついた先輩は、
ニヤリと笑ってこちらに小さくピースサインを送った。



”もしも上位10位に入ったらご褒美くれる?”


前田は、どんな顔でこの光景を見ているんだろうか。


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