02
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両手が塞がった状態で扉を開けるには、 いったいどうしたらいいんだ?
そんなしょうもない理由で、オレは今職員室の入り口の前に立ち尽くしているわけで。 誰か通りかかってドア開けてくれたりしないか、、、つか、職員室から誰か出てこい!
そんな思いで目の前の扉を見つめていたところ、扉の向こうに数人の気配が近づいてきたのに気がついた。
人数は、、、二人?そして、この声は体育教師の前田か?
前田は若くて見た目もいいうえに、部活動の指導も熱心なので生徒の人気は高いが、なんというか、そのさわやかな明るさが作り物っぽいというか、本音が見えない感じがする人で。
浅羽家の双子なんかは入学当初から「ああいうのが、実は裏では女子生徒だまくらかして遊んでるんでしょ?」「明らかに腹黒そうだよね。」とか言ってて、、、
「とりあえず、上位10番に入るくらいの勢いで真面目に走ってくれ。いいかげんお前のフォローすんのもしんどいんだわ。」 「ふーん。じゃ、もしも上位10位に入ったらご褒美くれる?」 「ああ?お前がか?ムリだろそりゃ。とりあえず見学はナシな。」 「じゃ、約束。10位以内に入ったら泊まりでデート!」 「はいはい。とにかく完走はしろよ。」
声を潜め、だるそうな口調で女子生徒の相手をする前田が、まるで双子の言ってた通りで笑えない。そして、女子生徒の声がものすごく聞き覚えのある声で、マジ笑えない。
ガラッ
目の前でガラリと開いた引き戸の向こうには、目を見開いてこちらを見ている綿貫先輩の姿があるわけで。
ああ、なんだよこれ。本当に笑えない。
「「・・・・・」」 「塚原くん、それ、総会の??」 「え、、、ああ、そうです。」 「半分持つよ。手伝う。」 「あ、ありがとうございま、、、す。」
綿貫先輩は丁寧な手つきでオレの手から資料を半分取り分けると、マラソン大会の準備でザワザワと混雑した職員室の中を器用にすり抜けて歩いていく。 オレはというと、無言でその後に続き、見慣れないジャージ姿の先輩の背中を見ながらさっきの会話を頭の中で反芻するばかり。
前田と綿貫先輩は、つき合っているんだろうか? それとも、単に、遊ばれているのか、遊んでいるのか??
って、何考えてんだ、オレ!!
カッと顔が熱くなって鼓動が早くなる。一人でグルグルと考えをめぐらせて勝手にドギマギしていると、先輩が足を止め、クルリと振り向いた。
「塚原くん、ここで平気?」 「え!?あ、はい!」
生徒会専用の棚に手慣れた手つきで資料を詰め込んでいく先輩を手伝いながら、心の中で繰り返す。
先輩、前田とつきあってるんすか?
ああ、なんだろう。この気持ちは。 腹立たしいような、情けないような、この気持ち。
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