15 コレクション
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わたしとヤマケンが後藤と揉めてるのを見かけた3バカトリオが、喜々として参戦して後藤をボコッたところまではなんとなくわかる。 というか、目の前で見ていた。
で、問題はその先。どうやら後藤は一般の高校生ごときがケンカを売っていい相手ではなかったらしい。
「え?どういうこと??」 「だからさー、あれはダメだわ。ヤクザの一人息子だわ。後藤でしょ?ちょっと有名じゃんよ、この辺では。」 「はあ!?何それ、やっべー!トミオもそういうことはもっと早くに気がつけよな!!」 「あー?だってあいつヤマケンはともかく、サヤカちゃんのこと殴ろうとしてたんだぜ?」 「そうそう。やって当然っしょ。」 「んー、じゃ、いっか?過ぎた事はしょーがねえしなっ!」 「「そうそう。」」
いやいや、全然良くないでしょ!!
というわけで、しばらくして後藤の舎弟的な?なんか、よくわからない怖い人達に追っかけ回されることになってしまい、今は、息も切れ切れ、路地裏に潜んでいたりするわけです。
「ゴメンね、なんだか変なことに巻き込んじゃって、、、」
状況も、事の重大さも、まったく理解できていないが、自分のせいで迷惑をかけているのだけは確かなのでとりあえず謝ってみる。よくよく考えてみれば、ヤマケンが勝手にケンカを売ったせいとも言えるのだけれども。ああ、でもやっぱりそもそも後藤なんかと関わりをもったわたしが悪い。
すると、ずっと黙っていたヤマケンが口を開いた。
「で、まさかあれが元カレ?お前、男の趣味悪過ぎだろ。」 「違う違う!!さっき後藤が言ってた”佐久間”っていうのが元カレで、、、後藤とは幼なじみだって聞いてる。」 「ふーん。で、まだ未練があるとかだっけ?」 「それは、、、」
それは、、、わからない。さっきだって、車から降りてくるのが佐久間だと思っただけで、一瞬にしてネガティブオーラに飲み込まれてしまった。
でも、一つ気がついた事がある。 グルグルとわたしが考えていたのは、最終的には自分のことばかりだったじゃないか。
「佐久間さん自体に未練とかはないんだけど、、、あの時のなんだかわからない、ツライ気持ちだけを引きずってしまってるんだと思う。たぶん。」
ヤマケンはたどたどしく言うわたしを見下ろしながら、ふんと鼻先で笑うと、マーボくん向かって声をかけた。
「とりあえず、お前のコネで後藤の親の方はなんとかしろ。」 「んあ?オレ様の名刺コレクションの出番なわけねっ。オッケー。」 「トミオ達は、それまでの時間稼ぎ。下っ端ならやってよし。」 「はあー?んなの、どうやって見分けんだよ。」 「そうだな、、、ムダに機動力のありそーなのは、下っ端。」 「ふーん。ああいうの?」
トミオくんがそう言って、表通りでさっきから私たちを探しているバイクの2人組を指さすと、ヤマケンが無表情のまま「そ。あーいうの。」と答えた。
「ちょ、ちょっと待って!!!」
何やら楽しげに見えるくらい軽い足取りで、表通りに出て行こうとするトミオくんとジョージくんのシャツをグイッと掴んで叫ぶ。
「まずいんでしょ?後藤ってヤバいんでしょ??わたしが一人で出て行って、謝ってくるから。ね?もうそれでいいじゃん!!」 「はあ?いいわけねーだろが。」 「そうそう。サヤカちゃん、度胸があるのは十分わかったから、ここで待ってなって。」 「ヤマケンと一緒が不安なら、オレついててあげるけどー?」 「お前は、いーからネゴってろ!!!」 「はいはい。ちっ。」
な、なんなのこの人達。
こんなヤバい状況で、何楽しそうにしてんの?? 愛の友達だと思って勝手に安心してたけれども、本当はちょっと怖い人達なんじゃないかと、、、そんなことを思ったら急にドキドキしてきた。
そんなわたしの不安を見透かしたかのように、ヤマケンがポンと頭に手を置く。
「あと一時間もありゃ終わるから。そしたら家まで送ってく。」
はたかれたことや、髪をぐしゃぐしゃにされたことはあっても、こんなに優しく触られたのは初めてかもしれない。他の三人も、いつもと変わらない笑顔を向けてくれる。
、、、ああ、もう、本当になんなのよこの人達は。
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