オトノツバサ | ナノ



09 アイス
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二年になって最初の中間テストが終わった。
終わりましたとも。そして、わたしも終了です、、、

「さーやーか!アイス食べて帰ろうよーって、あれ?もしかして元気ない?」
「いや、大丈夫。食べて帰ろう。そして、頭を冷やそう、、、」
「またまた、そんな顔しちゃってー。どうせ普通に点取れてんでしょーに。」
「普通には取れてるだろうけどさあ、、、今回いつもよりがんばったのよ!結果が努力に比例しないのが許せない!!」
「そういうもん?」

そういうもんです!!

昨年までは部活がテスト休みの期間、愛と一緒に図書館で勉強をしていたのだけれども、今年からは一人だから。だから、我ながらがんばったつもりだったんだけれども。やっぱり解説してくれる人がいないと、勉強もなかなか効率が悪い。

テスト期間中は一斉に生徒達が下校するためバス停が混んでいる。もちろん並んで待ってるほど気が長い方ではないので、駅までの坂道を菜々実と並んで歩くことに。すると、海明学院の前を通り過ぎた直後、突然、菜々実が「そういえばこないだ川で会った子、海明だったっけ?」と言い出した。

「ああ、トミオくん?」
「そうそう、トミオくん。あれ、そうだよね?」

車道の向こう側、菜々実の目線の先には、確かに海明4人組。

「あ。ほんとだ、、、おーい!」

ぶんぶんと手を振ると、向こうも気がついて3バカくんが揃って手を振り返してくれる。ヤマケンはチラッとこちらを見て軽く手を挙げただけで、3人に何やら言ったかと思ったらタクシーを拾って行ってしまった。

「ありゃ。ヤマケン行っちゃった。」
「おおっ、あれが噂のヤマケンくん!?なーるーほーどー!」
「え?こないだハンバーガー屋で見たじゃん。」
「へ?そうだっけ??」

ヤマケンをヤマケンだと認識したのが初めてらしく、菜々実がしきりに「なるほど」を繰り返していると、交通ルールを無視した3バカが、クラクションを鳴らされながら横断歩道でもない車道をワイワイと渡ってやってきた。

「お、菜々実ちゃん、久しぶりー。あのあと風邪とかひかなかった?」
「うん。大丈夫だよ。」
「なっ、なになに?!トミオそっちの子も知り合いかよっ!抜け駆け禁止!!」

キャンキャンと噛み付くマーボと、ものっそい高速で頷くジョージくんに苦笑いで菜々実を紹介する。

「えっと、わたしの部活の友達で菜々実ちゃん、です。そいでもって、こっちが、マーボくんとジョージくん」

よろしくよろしくと、菜々実の手を握る二人は放っておいて、トミオくんを見上げる。

「ねえ、ヤマケン、どしたの?」
「あー、、、えっと、ちょっと用事があるから先に帰るって。」
「ふうん。なんか元気なさそうだったけど。」

なんとも歯切れの悪いしゃべり方をするトミオくんに、違和感。と、そこで、マーボが勢い良く会話に入ってくる。

「あー、ヤマケンね、失恋のショックで落ち込んでるんですわっ。あいつアホでしょー?」
「え?」
「おいー、人がせっかく濁してることを、そう簡単に言うなよなー。」
「バッカ、お前、こういうのはな、気を使って触らないより、グリグリ触っといた方が傷の治りがはえーんだよ!」
「そうかあ?」
「そうそう。だからね、サヤカちゃんもヤマケンに会ったら、ガリ勉女にふられたんだってー?とかいじってやって。」
「ふられ、、、た?」

マジで!!ヤマケンが振られた!?
ガリ勉女って、あの松揚の水谷さんのことだよね?ということは告白したの?
ヤマケンが??あのヤマケンが???

「あれ、サヤカちゃんショック受けてんの?もしかしてヤマケンのこと好きだったりしたわけ!?」
「いや、そうじゃないんだけど、、、ショックというか意外と言うか、、、」

てっきり、勝てない勝負はしない人だと思ってた。


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