オトノツバサ | ナノ



07 ロードワーク
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「おかーさーん、行ってきまーす。」
「あら?今日は早いのねえ。」
「ん。部活休みだから、菜々実とロードワークだけ。」

連休に入り学校はもちろんお休みなのだけど、コーチの都合で今日明日は部活もお休み。そろそろレギュラー争奪戦が始まるので、家が近所の菜々実と待ち合わせをして川沿いを走りに行くことになっている。人の目が気になるお年頃ですし、家からジャージだからね。あんまり人通りのない早朝に行きたいわけです。

家の前で念入りにストレッチをしていると、早朝の静かな住宅街に響く聞き慣れたリズミカルな足音がだんだん近づいてくる。

ほらきた。もうすぐ、あと、、、10秒くらいであの角を曲がってくるはず。
、、、3、2、1、見えた!

曲がり角から現れた菜々実が、チラッとこっちを見たのを合図に走り出す。

ここからはいつもお決まりのコース。川沿いのサイクリングロードに出るまでは、だいたい無言で菜々実を追いかけることになる。小学校のミニバス時代からのチームメイトで、背こそ高くはないけれども、スピードと持久力はかなりのもの。いつもの、おっとりノホホンとした様子からは想像もつかないことだけど、大して強くもないうちの部では、一年の春から、ガードは菜々実が不動のレギュラーだ。たまに行くロードワークだって、始めた当初は彼女のはるか後ろをついていくのがやっとだった。

だが、しかーしっ!今日こそ追いつく!!

彼女との差はあと1メートル。前方からは規則正しい息づかいが聞こえる。
少なくともわたしより15分は長く走ってるはずなのに、今のところ息の乱れはまるでない。

さあ、この先、唯一の信号が、、、、、今日も青!
車通りもまったくないので、2人ともスピードを落とさずに走り抜けた。
まあ、信号で追いついたんじゃ、意味ないからいーんだけどさ。ジリジリと追い上げながらも、だんだん息が上がってくる。

数段の階段を駆け上り遊歩道に入る。
河川敷の広場まであとちょっとというところで、ようやく菜々実に並び、その勢いで追い抜いた。

追い抜きながらチラッと横を見ると、顔色ひとつ変えずに淡々と走る菜々実の姿が。

あれ?菜々実にその気はないってこと??

ちょっと拍子抜けしつつも、まあ、勝ちは勝ちだ。自分の気分的に、満足なのでそれで良し。あー、なんにしても、ようやく追いついた!本当は同じ距離を走った上で勝てれば大満足なんだけど、多くは望むまい。

ニヤニヤしながらもスピードは緩めずラストスパートをかけていたところ、広場まであと100メートルというところで右側に気配を感じた。

え?


そこからはあっという間。
気がつけば、いつも通り、菜々実の背中を見ながら広場へ入っていたわけで、、、

えええ!?なんでよー!!

先に、クールダウンのストレッチを始めた菜々実の前に、ゼーハー言いながら仁王立ち。

「な、なん、なんでよっ!?」
「んー?何がー??」
「まっ、まだ、よっ、余力、、が、、あっ、、」

菜々実がグッと肩入れをしながら、上を見上げてニッコリと笑う。

「まだまだあるよ?」

ガーン!マジでかっ!!
肩で息をしながら立ち尽くすわたしに、「ほらほら、サヤカもクールダウン。次のメニュー行くよー。」って、、、も、もう、しばらく走れません、、、


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