05 デザート
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結局、昼ご飯を食べて、デザートまで美味しく頂いた後、ようやく今朝の授業で倒れた話が伝わり、さっさと帰れということに。
「まったく。そういうことはもっと早くに言えよな。」
ブツブツと文句を言いながらヤマケンが立ち上がる。
「ええ?最初に会ったときに言ったじゃん!具合悪くて早退って!」 「お前、家どこだよ。タクシーで送ってやる。」 「いいよ、いいよ、そんなの!幾らかかるかわかんないよ?」 「じゃーまあ、とりあえず駅までは送ってこーぜ。」 「よっしゃ、行こう行こう!」
、、、ああ、もう、なんて律儀な不良どもだ。
おかげさまで、ヤマケン一派、4人を引き連れて駅まで歩くことになってしまった。そして、人のことは言えた義理ではないが、この4人派手すぎる!!「具合が悪くて早退」という免罪符があるにも関わらず、端から見たらどう見ても「不良男子校生と授業をさぼってる派手な女子高生」。こんなとこ、生活指導の先生に見つかったら、あっというまに呼び出しだなあ、、、
そんなことをぼんやり考えながら、チラチラと回りを気にしつつ歩いていると、青い車が向かいの信号で止まったのが目に入った。
あ。
昨年、春先から、飽きるほどに乗った車。夏が過ぎて、その姿を街中に出るたびに探してしまったあの車。探していた頃にはまったく出会えなかったというのに、こんなときに限って現れるんだ。
条件反射のように、横を歩いてたトミオくんの後ろに隠れる。
「ん?サヤカちゃんどした??」 「あ、ゴメン。ちょっと、、、」
すると、ヤマケンがわたしの視線の先を確認してから、車とわたしの対角線上にスッと移動しニヤニヤと笑う。
「なに、あの車。もしかして彼氏とか??」 「違う、あの、、、、、元彼。」 「ふーん。じゃ、別に隠れなくてもいーんじゃね?」 「そうなんだけど、、、ほらめんどくさいじゃない?無視するのも挨拶するのも微妙だし!」
そうだよ。別に、誰と歩いていようと、文句を言われることはない。だって、もう彼とはなんの関係もないんだから。スカート丈の短さも、髪色の明るさも、そして今時の女子高生だったら普通なくらいの化粧も、なんの問題もない。
なのに、なんだろう。この胸のザワザワは。
「つか、だいじょぶかー?顔色わりーみたいだけど。」
マーボくんがわたしの顔を覗き込み、心配そうに声をかける。
「大丈夫。というか、だから、具合悪いから早退してるんだってば!!」 「あ。そっか。」 「うん、そうなのよ。」
アハハと笑い合ってる間に信号が青に変わり、トミオくんとヤマケンの間から、通り過ぎる青い車がチラッ見えた。
あの頃と変わらない横顔。助手席に誰も乗っていないのを確認して、ホッしている自分にうんざりする。
季節は春。
だから余計に、あの頃を思い出してしまうのかもしれない。
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