06 まだまだ続く冬期講習四日目。
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さて、今日も今日とて、わたしは冬期講習でございます。 ちなみにうちの学校、今日の放課後は、学年ナンバーワンの舞子ちゃんに来た「オレがいいならそっちから誘ってこい」という伝言の話題で持ち切りでした。うっはー、何様よ。って、ヤマケン様だよね。そうよね。
そんなヤマケンくんの後ろをキープすべく、ちょっといつもよりもゆっくり教室に入ってみたのだけれども、例の二人の姿は見えず。しょうがないのでいつもの席に座ることにしたところ、、、
なぜか、またもや隣にヤマケンくん。 席につく前にこちらに気がついたらしく「あ、昨日の。」とつぶやかれた。
「あの、、、わたし今日も2教科抜けなんで、通路側行きます。後でどいてもらうのも大変だし。」
ああ、もう、このまま通路と言わず、後ろの席に移動したいけれども、それはいくらなんでもあからさまだしな、と。 で、通路まで出たら、そこには氷の女王水谷さん。「先に入ってください」とジェスチャーで伝えつつ、そうか、わたしは彼女の隣に座ることになるのか、と、現実を突きつけられる。 今日もヤマケンウォッチどころではなく、つらい2時間になりそうです。
それにしても、この二人。 付き合う直前の二人か?くらいに思ってたのだけれども、どうやら違ったようで。 講義以外の時間、水谷さんは無言でひたすら自習。ヤマケンくんはこちらをチラチラ伺ってるようなので、何か話したそうにしてる風にも見えるけれども、一切話しかけてこない状態なので、まあたぶん一方的に水谷さん狙いってわけでもなさそうだし、、、 この二人の関係性はいったいなんなんだろう?
とりあえず、ヤマケンウォッチのチャンスを阻まれたわたしは、参考書を見ながらぼんやりとそんなことを考えていたのだが、「あ」と、水谷さんが小さな声をあげたので顔をあげた。
「それ。その参考書。わたし気になってたの。良さそう?」 「え?これ??、、、あー、わたしも先週買ったばかりで、、、」 「そうだったの。使用者の話を聞きたかったんだけど。なら、いいわ。」 「学校の先輩に勧められたんだけど、って、あ、特進の先輩。です。」
とりあえず、音楽科の人間に勧められたものでは、水谷さんも納得すまい。 実際に、これはサヤカの部活の先輩である特進クラスの人に勧められたものだった。
「音女の音楽科ってさ、ほとんどが内部進学するもんなんじゃねーの?」 と、そこで、水谷さんの向こうからこちらの様子をうかがっていたヤマケンくんが会話に入ってきた。
ん?そうか、会話に入りたいのか。やっぱり水谷さん狙いか。 よしよし、混ぜてやる。ありがたく思え。席が離れているのでヤマケンくんの威圧感が少し薄れてて、対ヤマケンに関しては少し余裕があるかも。今日のわたし。
首をひょいとのばして、ヤマケンくんに返事をする。 「そうなんだけれども、ちょっといろいろ思うところがあって、外部受験しようかと。音大だけど、他大学。」
すると、今度は水谷さんが、 「音大って、英国だけで受けれるものなの?」 「一応、希望の大学は、センターの英国とリスニングが必須です。」 「そう。国公立のレベルの高い大学を狙ってるのね。」 「そう、、、なのかな?確かに倍率はえらい高いけれども。」 「どういうこと?」 「あー、選考は実技とかでほとんど決まるんです。音大だから。楽器の演奏とか、聴音とか。で、最終的に決まらない場合に、参考にするのがセンター。」 「そうだったの。」
「じゃ、それほど点数は必要ないんじゃねーの?音楽の部分で勝負すればいいだけの話だろ。そんなにそこに自信がないわけ?」と、またもや会話に入ってきたヤマケンくんに、もう一度首をのばして返事。
「自信があるからこそ、音楽以外の要素で落ちるなんて嫌でしょ? 勉強なんて、自分が努力さえすればそこそこなんとかなるんだから。」
あ、しまった。ちょっとムキになった。 なんか嫌な言い方しちゃったかも。
と、水谷さんが目を丸くしながらこっちをジッと見ている。 やばい。氷の女王の表情が変わってる。まさかこっちを怒らせるとは、、、
「わかるわ。」 「へ?」 「あなたの言うこと、すごくわかる。 努力次第でなんとかなることだもの。努力をしない人間はクズよ。」
いやいや、そんなこと一言も言ってませんて、、、 ガリガリと勉強に戻った水谷さんを見て、ついつい、はあ、、、と小さなため息をつくと、 向こうでもヤマケンくんが、ため息。ため息がハモった。 と、そこで次の講義の始まりのチャイムが鳴った。
とりあえず、好きな子がこの調子じゃ、ヤマケンくんは大変だな、、、 というか、本当に好きなのかな?水谷さんには大変申し訳ないが、本当に見れば見るほどモサイ。モサくていらっしゃる。そして、一般的に女子に必要とされる愛想というものがまるでない。(人のこと言えないけど)
ヤマケンくんがマイフェアレディをやりたいってんならともかく、普通に考えたら、あり得ない組み合わせだよなー。
本当のところは、どうなんでしょ?
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