オトノツバサ | ナノ



05 引き続き冬期講習三日目。
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というわけで、怒濤の冬期講習三日目。
国語、英語の講義が終わりました。

小休憩のため夜食を食べる人、飲み物を買いに外に出る人、いろいろいますが、わたしは2科目のみの受講なのでこれにて退散です。ああ、もう、今日もグッタリだ。というか、ヤマケンくんが横にいるという緊張のせいで、昨日までの2倍はグッタリだ。

荷物を片付け、座席に置いてあったコートとマフラーを抱えると、「あ、出る?」とヤマケンくんがこちらに気がついてくれた。

おおっ!意外だ!周りに普通に気を使えるいい人だ!!(第一印象が悪いので、もう、何をされてもプラス。)

「ほらほら、水谷サンどいて。って、いつまでも弁当食ってんじゃねえよ。」
「え?ああ、奥の人が出るのね。」
「つか、あんた、食ってるときくらいテキストしまえよな?」
「どうしてもさっきの長文読解が納得いかないのよ。
 疑問は早めにつぶさないと、、、」

二つくくり女子は、水谷さんというらしい。
人を見下ろせる順位ってのはいったいいくつくらいなのか、こないだの模試の順位が気になるわ。帰りに掲示板でもう一回見てこようっと。まだ貼ってあるかな?
などと下世話なことを考えながら、「スミマセン、スミマセン」とペコペコ謝りつつ荷物を持って座席を移動する。わたし、今日は予備校来てからスミマセンしか言ってないわ。情けない。

ふと、水谷さんの開いてるテキストを見ると、さっきの講義の最初にやった長文読解問題。

「あ、これ、ひっかけなんですよ。先生の解説にはなかったけど、三章目のここ、ほら、コッソリ現在進行形になってるので、だから回答は3、、、」

つい、座席をすり抜けながらポロッと解説してしまったものの、抜け出た先に腕を組んで立っていた氷の女王のような水谷さんの表情を見て、ゾッとする。

「あああ!スミマセン!!」

しまったー、余計なこと言った!わたし余計なこと言ったよ!!完全に!!!ちょっとわかる問題だったからって調子に乗った。うわーーー、ヤマケンくんの彼女(で、いいのかな?)になんてことを!!!!

彼女の表情の無さにビビりまくり思わず固まっていると、水谷さんは氷の女王の表情のままテキストをチェックしながら、

「ああ、なるほど。そうね、理解できたわ。ありがとう。」と。

、、、え?お、お礼?言われた?余計なお世話じゃなかったってこと??未だビビりまくって挙動不審なわたしに、ヤマケンくんが、

「あー、この人もともとこういう顔なの。怒ってるわけじゃないから、あんま気にしないで。」
「あ、ああ、そうなんですか。良かった、、、」
「その制服、音女でしょ?特進??」
「や、えーと、音楽科です。」
「、、、は?」

うちの学校には、普通科、普通科特進、音楽科の3コースありまして、もちろん音楽科がぶっちぎりで偏差値低いわけです。
というわけで、音楽科と聞いたヤマケンくんのこの反応はまあ普通。「音楽科のバカがどうしてこんなとこにいるんだ?」ってなことですよね。はいはい。

いたたまれなくなって、「えーと、じゃ、わたし2科目のみなんで、こ、これで失礼します。」と、逃げるように教室を後にした。





はー、ビックリした。
というか、喋っちゃったよヤマケンくんと!!って、喋ったうちに入るよね?
そんなに怖くなかった!!
彼女さんも、怖かったけど怖くなかった!!!(どっちだ)

芸能人に遭遇したときのような得した感にホクホクしつつ、家路を急ぐ。もうすぐクリスマス。街路樹もLEDライトでピカピカしてて、特にクリスマスに何があるというわけではないけれども、ワクワクする。

よーし、明日はヤマケンくんの後ろあたりをキープして、今度こそ遠慮なくじっくり見てやろう。
ちなみに、事務室横の掲示板を見てきたら、水谷さんは全国模試一位でした。おまけに、ヤマケンくんは三位、、、やっぱりわたしとは別世界の人達なんだなあ。



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