オトノツバサ | ナノ



39.5 Smoke gets in your eyes
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バタバタッとスカートをひるがえして雨の中を走る彼女が、無事に軒下までついたのを確認すると、短くハザードをつけ合図をしてから車を走らせた。

ラジオのボリュームを上げると、さっき流れていたプラターズつながりか、今度は女性ボーカルのジャズバージョンで「煙が目にしみる」をやっている。

「目にしみるのは、煙草の煙じゃねーんだけどなあ。」

ふとつぶやいて、歌の続きをラジオに合わせて口ずさむ。

So I smile and say
"When a lovely flame dies,
Smoke gets in your eyes.

だから僕は笑って こう言うんだ
"恋の炎が消えた時
その煙が目にしみて涙が出るんだ"ってね



まだ、片思いかー。

高校生の、17歳の片思いってのは、どのくらいの重さなんだろうか?
自分の高校時代を思い出すも、どうにも薄っぺらい。たぶん、留学なんてしたら行きの飛行機の中で忘れてしまいそうなもんだ。

でも、愛ちゃんだしな。あの子は、案外しつこい気がするんだ。しつこいってのも失礼な言い方だけれども、ものすごく盲目的なところがある。


信号につかまったのをいいことに、煙草に火をつけてくわえる。

さて。さっさと家に帰って、久しぶりにクラシック曲の練習でもするか。
少しでも、彼女の記憶に残るよう。


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