オトノツバサ | ナノ



35 ゆれる窓際
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ymk side
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閑散とした二月の図書館に、レポートのために借りていた本を返しに来たら、予想外の大雨。ついてねーなあと思った矢先、手元の携帯にはわけのわからねえメールが来ている始末。今日は厄日か?

《もう会えないかもしれません。どうしよう?》


、、、うーん、これは、あれか?「あなたに会ってるのが彼氏にバレたからもう会えません」的な?それとも病んでテンパった女がよくやる、「かまってくれないなら、もう死んでやる!」的なあれか?

差出人があの成田サンなので、どちらも違う気がする。そもそも、あいつに手を出した覚えはねえ。よな?
めずらしくというか、初めてのメールだってのになんなんだよいったい。普段のオレなら身に覚えのない事は無視しとくとこなんだけど、相手が相手なので、こっちも気になってしまう。

とりあえず、こういうのは長引かせるとろくなことにならないので、まずは返信。

《件名 Re:こんにちは》
《本文 今、どこにいんの?》

これまでの経験上、一人でテンパった女には、とりあえず顔を見せて安心させてやればオーケーなことが8割。
と、手元の携帯が震えて光った。

《件名 ゴメンナサイ》
《本文 相談したいことがあったんだけれども、
    テンパって変な文章でメールを送ってしまいました。
    さっきのメールはなかったことにしてください。》

はあ?っんだよ、それ?
イライラしながら再度返信をする。

《件名 Re:ゴメンナサイ》
《本文 だから、今、どこにいんの?》




それにしても、一昨日会ったときには何にも変わった様子はなかったんだけどな。なんかあったのか?何分か前の返信以来うんともすんとも言わない携帯を手に、思い出すのはベンチに座って笑っていた彼女。


、、、あー、もう、くそっ。

書庫で通話をするわけにもいかないので、早足で自販機のコーナーへ急ぐ。画面をスクロールして成田サンの番号を呼び出すと、通話ボタンを押した。


早く出ろ。さっさと声を聞かせろ。

ったく、なんで自分の女でもねーのに、こんなことしなくちゃなんねーんだよ。
イライラしながらふと外を見ると、激しく窓に打ち付ける土砂降りの雨のせいか、中庭の緑がグラリと揺らいだ。


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