オトノツバサ | ナノ



04 となりのヤマケンくん。
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「スミマセン、ここいいですか?」

丁寧な言葉使いのはずなのに、異様なまでの上から目線オーラ。
俺様が座ってやるからちょっとそこをどきやがれ、と言われてるかのようで、ついつい「スミマセン!!」とペコペコ謝りながら椅子の上に置いてあったコートを自分側に寄せる。

講義前でざわつく教室の中で、ヤマケンくんの座った左側に意識が集中してしまう。
こ、こわい。なんか、こわいよこの人。顔が綺麗なせいで、余計にこわい!もうちょっと近くで見たいなあなんて思ったのがアホだった。せめてわたしの前に座ってくれたら、無神経な視線を送っても大丈夫だっただろうに、ここまで近いと見れないよ!!

「人間には2種類いるからな。バカな奴と利口な奴。
 バカな奴ってのは、お前らみたいな一点しか見えねえ要領の悪い奴のことね
 オレはこっち、あんたらはそっち。」

意識が集中してるせいで、二つくくり女子との会話がところどころ漏れ聞こえる。
ヤマケンくん以外が言ってたら鼻先で笑ってしまいそうなセレブ意識丸出しの発言も、彼が言うと「はあ、そうでございますね」とうなずいてしまいそうです。わたし。つか、なんて会話だ。二つくくり女子はどんな顔して聞いてるんだろうか。

「あなたとわたしの、何が違うの?」

あ、応戦した。しかも、ヤマケンくんの暴言を完全スルーの冷静さで。
ひー。この子もこわいよーーーー!!

「少なくともオレなら、あんたに不安も迷いも与えないね」

って、あれ?もしかして、口説き中?、、、こりゃいかん。横で聞き耳たてていい内容じゃないわ。

というわけで、昨日の復習は諦め、鞄からiPodを取り出しイヤホンをつける。
目を瞑って音楽に集中。講義がはじまるのを待つことにした。

しかし、口説いたりするのって、もうちょっと甘いムードとか必要なんじゃないでしょうかね?予備校の教室内で、そんなお互い臨戦態勢みたいな態度で、ねえ?
頭のいい人達の考えることは、わからん。


講義が始まり、周りが講師の一挙手一投足に集中してる中、チラッと隣をうかがってみると、ヤマケンくんの機嫌がさっきよりも明らかに良い。というか、ニヤニヤしてるくらいの上機嫌。

こ、これは、、、まさか、さっきの会話でうまくいったということなのか?二つくくり女子は、あれで落ちたのか?わたしが音楽聞いてた間に何があったのか、、、気になるわあ。

それにしても、本当に綺麗な男の子だ。
目も、髪も、色素の薄い茶色で教室の蛍光灯の光を反射して光ってる。ペンを走らせる指先に目をやると、その細くても大きな手に、ようやく男の子なんだなあと思い出すほど。

わたしの短い人生の中での経験上、美しい人は、だいたい心の中も美しい。
たぶん、「美しい」という強力なアドバンテージが精神的な余裕を生んで、変に汚れずに済むんだろう。

ヤマケンくんはどうなんだろうか?
わたしには、「強烈にプライドの高そうな怖い人」という風にしか見えてないけれども、うちの学校の彼のファンの子たちには、その美しい部分が見えてるのかもしれないなあ。

できることならわたしも、
ちょっと見てみたい。


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