オトノツバサ | ナノ



28 手を振る二人。
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「あ!サヤカちゃん&愛ちゃん発見!!」

学校帰り、マーボが目ざとくバス停に並んでいるサヤカと成田サンを見つけて走って行く。トミオとジョージももちろんそれに続き、「あれー、ヤマケンは行かねえの?」と、側で見ていたクラスメイトに声をかけられた。

「行かねーよ。」
行くかっつの。犬じゃねーんだぞ。尻尾振ってワンワンか?

「なー、あの二人、音女?けっこうレベル高くね?」
「ふん。まあまあじゃねーの。」
「まだ誰ともくっついてないんだったら紹介しろよー。」
「あー、あいつらに殺されっから無理。」
「ははっ、確かに。」

しっかし、あの二人、、、

こないだは、オレだけチョコ無しという仕打ちに軽く凹んだが、あれだ。ようは、他の三人との区別をつけられたと思えばなんてことはない。もちろん、オレが上であいつらが下だ。むしろ同じ扱いにされなくて良かったってもんだ。
とはいえ、腹立たしいことには変わりない。

三人が何か大きな身振り手振りで話かけ、サヤカと成田サンがコロコロと楽しそうに笑うのが見える。
と、こっちを見て、二人揃って手を振ってきた。

、、、まあ、確かに、ふつーに可愛いけど。

「あっちの髪長い子、いいわーーー。」
「俺も俺も。左の子派!!」
「いやー、綺麗系より可愛い系だろー。右のボブの子に一票!」
「ああ、お前好きそうだよな。あーいう感じ。」

クラスメイト達がワイワイと騒ぎだし、めんどくさくなってきたのでマーボ達の方へ移動した。

「よお。」
「あ、ヤマケンくんはテストどうだった??」
「別に。学校の期末なんて、大したことねーだろ。」

他に話題はねーのかよと思いつつ、そんなしょうもない話題でも、そっかー、そうだよねー、と一生懸命に何度も頷く成田サンを見ていると、こないだピアノの前に座ってた人物は、まったくの別人だったんじゃねーかと思ってしまう。

こないだの彼女は、大胆にして不敵。そして、どこまでも好戦的だった。

「あんたさ、」
「え?」
「や、なんでもない。」
「???」

ほら、普段の成田サンは、こうやってちょっとつついてやるだけでも、顔を真っ赤にして悩みだす。ここが戦場なら、あっという間にやられるタイプだ。背後を狙わずとも、対面からザックリだ。

バス停のベンチに座り膝の上に置いたヴァイオリンケースを両手で抑え、目の前に立っているオレを、女どもがよくやる作為的なそれではない上目遣いでジッと見上げている。ああ、思った以上にまつ毛長いな、こいつ。

ザックリ。

オレでもやれるか?

などと一瞬思ったが、いやいや、そうじゃねーだろ、と思い返す。
たぶん、成田サンは単に天然。

相手が誰であっても、例外なくこんな態度だ。きっと何を言おうとしたのか純粋に図りかねてるだけで、次の言葉を聞くためにジッとこちらを窺っているだけってとこだろ。あぶねーあぶねー。

なんか、最近、自分になびきそうもない女ばかりに興味がいく。いったいなんの病気だっての。めんどくせーなあ。

ふと、水谷サンの顔が思い浮かんだりするあたり、本当にタチが悪い。


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