オトノツバサ | ナノ



24 少ない武器で戦う方法。
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うんうん、いい感じ。我ながらバッチリだったと思う。
たくさんの拍手に口笛まで吹いていただいて、光栄でございます。えへへ。
さー、次々。

先生の音楽仲間さんがステージにのっそり上がってきて、チューニングを始めた。アップライトのベースのチューニング音が聴こえる。一応アーの音出しといた方がいいかな?ポーンと控えめにAの音を鳴らす。

スネアドラムのバネを張る音、そしてハイハットを閉じるシャッ、シャッという音が何度か聞こえ、二人と目が合ったらはじまりの合図。

さ。はじめましょ?

アップテンポな4ビートをドラムが刻み、ランニングベースがそれを追いかけ始める。

ジャズのセッションは完璧アウェイなので、わたしの武器は本当に少ない。
とりあえずこのセッションの基本になるテーマが一つ、そしてこのキーで使えるスケールをいくつか覚えているのと、レッスンのときに先生が見本として弾いてくれたアドリブソロをコピーしたもの。この三つで全て。

老練のリズム隊に乗っかって、気持ちよくテーマを弾きながら、どんどん気持ちが高ぶってくるのがわかる。実は、生のドラム&ベースとのセッションは、今日が初めて。ぶっつけ本番。なんて気持ちがいいんだろう。

テーマが終われば、まずはピアノソロ。ドラムがカーンと甲高いリムショットを叩いた後にブレイク。いくぞいくぞ。

さあ、わたしのターンだ!

テーマのリズムを少しずつ変えながら、装飾音を足して様子見をしていると、高音まで上がって行くベースに責め立てられる。いつまでも様子見するなってこと?答えるように、スケールを使った速いフレーズを紡いで行く。その紡がれたわたしの音を、一つずつ丁寧に拾って行くかのように、ドラムがカッカッとアクセントをつけていった。

ああ、楽しいなあ。なんだろうこの気持ち。
なぜだかとても体が軽い。

今、わたしは、どこまでも自由だ。


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