21 毎日がはじめて見る顔。
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本日、日曜日。いろんなとこからの呼び出しが重なると思ったら、なんのことない、今日はバレンタインデーだそーだ。
「だーかーらー、なんでオレが責められなくちゃなんねーんだよ!!」 「うわっ!逆切れかよ!!ヤマケンふざっけんな!!」 「そうだそうだ、友というのは何事も分けあうべきだ!」 「「「オレらにもチョコよこせ!!!」」」
うぜーーー。
とりあえず、今日呼び出されてた分のアポは全て片付いたものの、帰ろうかと思ってた矢先にこいつらに追い回されて今に至る。
「で、どうするー?ボーリングでも行く??」 「よし。今日こそ、誰が一番モテるか勝負だ!!」 (だから、オレだろうに。)
と、そのとき、赤信号の横断歩道の向こう側に、サヤカがいるのに気がついた。サヤカと成田サンの音女コンビとは、どうにも街中でバッタリ会うことが多い。、、、って、こいつらの気をそらすためには、絶好の人物だな。
「あ、サヤカだ。」 「ええ!?なになに!?どこどこ???」 「そうかっ!サヤカちゃんがいたか!!さては、これは運命だなっ!!」 「チョコ!!チョコ!!!」 「、、、いや、普通に考えて、用意してねえだろ。」
「「「おーい」」」
と、こちらに気がついたサヤカも「おーい」と手を振ってきた。あーあ、かわいそうに。絡まれるぞ。知らねーぞ。って、オレがけしかけたんだけど。
サヤカが小走りに横断歩道を渡ってきた。長くて艶のある髪を、いつも以上に気合いを入れて巻き、白い息を吐きながら駆け寄ってくる様は、なんというか、これに騙される男は多いんだろうなあという感じ。これで口さえ開かなければ、まあ、けっこういい感じなんだけど。そうはいかねーのがこの女。開口一番、ケンカ腰。
「こんな日に、四人そろってどうしたの??つか、ヤマケン、マナミとユカリは!?」 「はあ?なんでお前が知ってるんだよ。女子の情報網、うぜー。」 「うっさい。ダブルブッキングなんてしてるあんたが悪い!ちゃんと二人とも泣かせてないでしょうねえ?」 「そんなめんどいことするわけねーだろ。」 「ね、ね、サヤカちゃんはどこ行くの??オレら今からボーリング行くんだけど一緒行かない!??」
あーあ、こいつら本当にバカだ。バレンタインの日に、こんなにめかしこんで、小さな花束まで持ってんだぞ?これから男とデートに決まってるじゃねーか。
と、サヤカがふと考え込む仕草をしたあと、 「ね。ボーリングは後にして、一緒にピアノ聴きに行く気ない?」 「へ?なにそれ?」 「愛のピアノの発表会なの。そこのカフェ?というか、バー?でやってるらしいんだけど、、、」 「「「行く行く!」」」 「、、、バーでピアノの発表会って、なんだよ。」 「なんかね、ピアノの先生がジャズピアニストらしくって。先生がよくライブをするお店なんだって。」 「はあ?音女の音楽科なのに、クラシックじゃねーのかよ。」 「ん?愛はそもそも、ピアノが本業じゃないから、、、」
なんだそれ。でも、普通のピアノの発表会を見に行くよりは、飲食店でやるライブの方がハードルが低いか。 三人が乗り気なので、めんどうだが、とりあえずついて行くことにした。
あと、少しだけ成田サンのことが、気になったのも確か。
こないだ、雪の中でからかわれて顔を真っ赤にして怒ってた彼女。今日はどんな顔してピアノなんて弾いてるんだか。どうせまた、オレが見たことねー顔してんだろ?
「、、、ったく、どれが素なんだか。」 「お?なんか言ったかヤマケン?」 「や、なんでもねーよ。寒いから、行くなら早く行こうぜ。」
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