オトノツバサ | ナノ



20 甘くて、小さくて、でも強い。
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そして、放課後、ちょっと遠出でサヤカと二人、デパ地下に来ております。

「これこれ、ここのがおいしいの!」
「じゃ、、、えーと、ピアノの師匠の分と、お父さんとお兄ちゃんでしょ?、、、あ、あと週明けになっちゃうけど、ヴァイオリンの先生の分も!」
「えええ?何よそれ、お歳暮じゃないのよ??本命はどうしたの!本命は!!」
「あ、そうだ。あと三つ!」
「三つ?誰の分??」
「三バカくん。」

ここんとこ、ずっと、チョコレートが欲しそうなメールが来ているのです。
甘い物が食べたい、とか。そんなみえみえの。が。まったくもって、かわいらしい人達だわ。

「え?なに?約束してるの?」
「や、特に約束はしてないけど、来週いっぱい持ち歩いてたら、きっとどっかで会うでしょ。」
「うわー、何それ、義理にもほどがある!!」
「義理でも、同い年の男の子にあげるなんてドキドキするなあ。」
「うーん。じゃ、それ、わたしも乗る。二人からにしよ。こないだドーナツおごってもらったんだわ。」

持ち運びに困らないくらいの大きさで、三つ追加で購入する。

「でも、三つ?ヤマケンの分は??」
「だって、ヤマケンくんからはチョコ欲しいって言われてないもん。」
「、、、ねえ、バレンタインって何の日だかわかってる??」

いいんです。他の女の子と一緒に、適当にかわされるなんてゴメンだもんね。

別れ際まで、「ヤマケンの分はー?」としつこくサヤカに言われ続けたけれども、そこは初志貫徹、買わずに帰って参りました。わたしはけっこう頑固なのよ。

今日は、金曜日。明後日のバレンタインデーのために、どれだけの女の子がドキドキしながらチョコレートを用意してるんだろう。

この先、わたしが誰かに「好きです」と告白をすることなんてあるんだろうか?
まったくそういうこととは無縁にきてしまったので、今さらどうしたらいいかよくわからない。好きだと伝えたところで、相手から同じ温度の答えが返ってくるとは限らないのだ。そんな恐ろしいこと、みんなよくできるよなあ。

世の中の女の子ってのは、みんなけっこう強いんだな。


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