オトノツバサ | ナノ



18 雪見ミルクティー
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転ばないよう、ノロノロ歩いてるせいもあって、いまだ駅につかない。ゆっくりゆっくり、真っ白な雪の上に、わたしとヤマケンくんの足跡をつけていく。

少し先にある自販機の明かりが雪に反射して、妙に明るいのを見ながら、ふと思い出した。
「そういえば、年末のスタバのお礼してないや。」
「は?」

自販機前で立ち止まり、先に進もうとするヤマケンくんのコートの裾をギュッとつかんで引き止める。

「ほら、食い逃げだって言ってたじゃん。とりあえず、暖を取るために缶コーヒーでもいかがでしょか?」
「ふーん。缶コーヒーって、甘過ぎて不味くねえ?」
「確かに。どうせ甘いなら、まだミルクティーのがいいかなあ?」
「ミルクティーね。」

ヤマケンくんはそう言ってポケットから小銭を出すと、ミルクティーのボタンを押す。

「ちょっと。ヤマケンくんが買ってどうすんのよ。」
「なんで、オレが女に奢られなきゃなんねーんだよ。」
「・・・・・」

だって、「次はおごれ」って言ってたじゃん、、、

「歩きながらだと、あんたコケそうだからあっちでな。」
二本の缶を片手で器用につかみながらそう言うと、顎をしゃくってシャッターの閉まったお店の軒先を指した。



少しは雪が避けれるかな?くらいの、気持ちばかりの小さな屋根の下、二人で並んで缶入りのミルクティーを飲む。雪はまだまだ勢いを増していて、通り慣れてるこの道が、一瞬、どこだかわからなくなるくらいだ。

「はー、、、あったかーい。」
「そりゃ、良かった。」
「「・・・・・」」

話題がない、、、えーと、えーと、なんか話題話題、、、、、

「あ、、、あの、そういえば」
「ん?」
「今度、ゆうちゃんたちと合コンだってね。」
「ブッ!?」

え?あれ?しくじりましたか?この話題はダメですか??

「、、、なに?あんた、来るの?」
「え、、、いや、行かないけど。」
「あ、っそ。ならいーんだけど。」
「行っちゃダメなの?」
「ああ、そういえばさっき兄貴に合コン行きたいっつってたか。」
「うわ!さっきのは忘れて、忘れて!!、、、どんなもんか行ってみたいってだけで、、、」
「あんたは、やめとけって。テンパって、喋れなくて、落ち込んで帰るのが目に見えてる。」
「・・・・・」
うわあ、確かにあり得る。

「だいたい、行って何すんだよ?」
「え、、、男子とお茶飲んだりお喋りしたりとか?」
「今しゃべってるし、茶飲んでるだろ。」
「えーとえーと、じゃあ、携帯のアドレス交換したりとか?」
「こないだ、教えてやったろ。つか、教えたところで送ってこねーじゃねーか。」
「ええっ?えっと、だから、そうじゃなくて、ほらヤマケンくん以外の人と、、、」
「ふーん、オレ以外でいいの?」
「うわっ、何それ!自意識過剰にもほどがあるっ!!」

ケタケタと笑うヤマケンくんから、怒ったふりして目をそらし、ざわついた気持ちを落ち着けるかのように、執拗に制服のスカートについた雪を払う。

ちゃんと、茶化したように聞こえたかな?うまく受け答えできてたかな??
どうにもこうにも、経験値の差があり過ぎだ。
このカードは、あまりにも分が悪い。


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