17 わからないのは?
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隣を歩くヤマケンくんの髪に、雪がフワフワと積もっていく。この髪、お兄ちゃんが切っていたとは知らなかったなあ。いつからかなあ?もしかして、もうずっと前からニアミスしてた???
駅までの遊歩道は、道も、街路樹も、もう真っ白だ。雪が音を吸収しているのか、辺りは妙に静か。
「あんたさ、なんか会うたびに感じが違うのな。」 「え?」 「さっきは、なんかすげー明るい妹キャラ、っつー感じだったけど?」 「あー、、、実際に、あのヤマケンくん切ってた美容師の妹です。」 「や、そうじゃなくてさ。なんか、なんつの?いつになくキャーキャーしてた。」
うわあ。やっぱり聞いてたんじゃん。恥ずかしい、、、うーん。うーん。
「、、、お兄ちゃんがさ、心配するんだよね。あんまりおとなしいと。」 「なにそれ?」 「わたし、ずっと一人で音楽ばっかりやってて友達とかもあまりいなかったから、そういうの心配してるみたい。もっと普通の女の子なりの楽しいことがいっぱいあるのにって。」
「へえ。それで、これか。」 ヤマケンくんが洋服の入った紙袋を、ひょいっと持ち上げる。
「人は見た目が9割、女の子はオシャレな方が印象も良いからって、もう中学生あたりからは着せ替え人形状態よ。あ、でも、単にお兄ちゃんが洋服選んだりするのが好きなだけかも。」 「ふん。くだらねーな。」
「そう?ヤマケンくんだって見た目で相当得してるでしょ?かっこいいもん。」 「・・・・・」
あれ?なんか変なこと言ったか、、、?黙り込むヤマケンくんを下からひょいと覗き込むと、心なしか顔が赤い。え?もしかして照れてるの??ヤマケン様が???
めずらしいもの見たわーと思わずしげしげと眺めていたら、「覗き込むな!」とグイッと頭を掴まれ押し戻される。と、またいつものシラッとした口調で、しゃべり始めた。
「あんた、あれだな。人の顔色伺ってキャラ作りすぎて、素の自分がどんなだったかわからなくなってるタイプだな。」 「あー、、、」 「気が強そうだったり、オドオドしてたり、男っぽいこと言ったり、女らしかったり。ほんとに会うたびに違うから、訳がわかんねーよ。」 「、、、ゴメンナサイ?」 「や、謝ることねーけど、なにが”かっこいい”だ。今日もオレのことまるっきりシカトして、とっとと帰ろうとしてたしよー。」 「えー、だって、最初に目があったとき無視したのヤマケンくんじゃん。」 「はあ!?そっちだろ??つか、目があったと思ったんなら声かけろ!」 「うーわー、その言葉、そっくりそのままお返ししますっ!」 「オレから声かけろっての?できるか、んなこと。あんた何様だよ。」 「うー、最後のその言葉も、そっくりそのままお返しします!!」
どうやら、わたしもヤマケンくんも、自分から声をかけないのを棚に上げ、シカトされたと思い込んでたっぽい。
「とりあえず、だ。今度会ったら、お前から声かけろ。いーな。」 「・・・・・はい?」 「なに?なんか文句あんの??」 「・・・・・」
あるけど、あるけど、うまく言葉にならない! あ、でも、今度からは会ったら声かけてもいいのか。本人のお許しが出てるんだもん、いいんだよね?とすると、これは嬉しいことを言われてるのか??
「も、ん、く、あんの?」 「な、い、で、す!!」
うー、でもなんか悔しい!!なんなの、この敗北感!!!
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