オトノツバサ | ナノ



14 渡り廊下から鯉を見る。
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「ねえねえ、ゆうちゃんの合コンの話聞いた!?海明学院だってよ!あと一人まだ決まってないんだって。サヤカも行こうよー。」

サヤカと二人で学食前の自販機にてジュースを物色していると、サヤカのクラスの女の子が興奮気味に声をかけてきた。誰だっけな、、、えーと、確かユカリちゃん?だっっけ??

「お、いーねー、海明学院。もしや向こうのオゴリ??相手、イケメン???」

紙パックのジュースにブスッとストローを差しながら、サヤカが聞くと、
ユカリちゃんがウフフとしたり顔で笑ってから、もったいぶりつつ答える。

「な、ん、と!相手は、あのヤマケン&三バカトリオ!ヤマグチくんよ!?」
「・・・・・」
((おおっ、そう来たか、、、))

「え?あれ?興味ない??」
「、、、あー、ヤマケンくんだったら、他に行きたい子いそうだからやめとくよー。」
「そう?じゃ、成田さんは、、、、、って、もちろん興味ないか。」

えへへ、と、我ながら微妙な笑顔で頷くと、「んー、じゃあ、マナミあたりに声かけてみるわ。本命被るとめんどくさいんだけどもしょーがないっ。」と、ユカリちゃんは学食の中に入って行った。



「・・・・・」
「相変わらず大人気だね。」
「、、、なんか、ゆうちゃん、ヤマケンくんたちと他校の友達とで、スノボに行ったらしくってさ。」
「へー。いいなあ、スノボ。」
「え?愛ってスノボ滑れるの?」
「ううん、やったことないけど。」
「だろうと思った。で、さ、マーボくんとこの別荘に泊まったらしいよ。」
「うわっ、男子と泊まりでスノボか!しかも別荘!」
「そうそう。」
「いやー、女子高生ってすごいね。中学の時とはわけが違うね。」
「あんたも女子高生でしょーが。」

そうだけどさあ。そうだけど、わたしはスタバでお話しするだけでもドキドキですから。一杯一杯ですから。男子と泊まりでお出かけだなんて、あり得ませんから!ドキドキ過ぎて死ぬわ。
飲みかけのジュースのストローをピンピンと親指で弾きながら、階段を登り、渡り廊下の窓枠に腰をかける。

もう一月も終わり。そろそろ二月かー。あ、そういえば発表会が近いんだった。

「あのさ、話は飛ぶんだけどさ、、、」
「え?飛ぶの?ヤマケンくんは気にならないの??女の子と泊まりで旅行だよ??そして合コンだよ???」
「えー、、、」
「気になるでしょ?いいの??あれから連絡取ったりしてないの???」
「うん。あ、でも相変わらず遭遇率は高くって、街中とかでたまに見かけるよ。こないだも電気屋で見かけたし。」
「うわっ、電気屋とヤマケンくんって、そりゃまた不似合いな場所で!」
「でしょー。」

しかも、水谷さんと一緒だったよ。って、まあ、これは言わなくてもいっか、、、

そして、なぜか店内放送かけられてた。ヤマケンくんが迷子のお知らせって。思い出しても笑える。どんな顔してインフォメーションに赴いたのやら、、、

「って、そうじゃなくて、なんで未だにそんな距離感なのよ?しかも、何、ニヤニヤしてんのよ。グズグズしてるとあっという間にどっかの女にさらわれちゃうよ!?」
「えーと、、、いつの間にか、わたしがヤマケンくんを好きってことになってない?」
「は?違うの?違わないでしょ??そうなんでしょ!?」
「そりゃ、、、、もちろんかっこいいなーとは思ってますよ。でもさー。」
「っかー!煮え切らない!イライラするうーーー!!」
「いつもスマンねぇ、、、」

でもさ、スノボ行った後に合コンでしょ?スノボのメンツでは特に話がまとまらなかったってことじゃないの?あと、たぶん、いくら合コンとかしてもヤマケンくんは、どうこうできないと思う。うちの学校の子には。

あの子、二つくくりの子、水谷さん。
たぶん彼女が、ヤマケンくんの本命だ。
そして、まだまだ彼の片思いで、どうにも進展しそうにない様子。
だから、きっとしばらくは大丈夫。



「で、話は飛ぶんだけど、来月半ばにピアノの発表会が、、、」
「もう!やっぱり飛ぶんかいっ!」
「えー、見に来ないの?」
「や、見に行くよ!もちろん見に行くけどもー。」
「おいでおいで。うちの師匠、けっこうイケメンだよ。まだ若いし。」
「あれ?でも、ヴァイオリンじゃなくて、ピアノ?なんで??」
「あー、受験に必要なんでピアノも習ってるの。うちの師匠、お兄ちゃんの友達だった人なんだけどさー」


話をしながらぼんやり中庭を見てると、用務員さんが池の鯉に餌をやっているところだった。ちょうど降ってきた小雨が、水面に小さな模様をつけては消えていく。これだけ寒いと、帰る頃には雪になってそうだ。

こうやって渡り廊下から見てる分には、濡れないし、寒くないし、ぼんやりしてられていいんだけどもな、、、
でも、それじゃ、いつまでたっても鯉にえさをやることはできないのだよ。


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