オトノツバサ | ナノ



13.5 フラペチーノ一杯目。
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本編12のサヤカちゃん視点。その一。
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冬休みももう終わり。明日から学校。というわけでわたくし、本城さやか、高校一年!本日は朝からセールに行っておりました!!って、年末にチェックしてた商品はほとんど年明けまでは残らなかったみたいで。これといった戦利品もなく、地元の駅まで帰って来てます。ガックリだ。

はー、、、それにしても疲れた。お昼はマックで食べたけど、お腹すいたー。甘いもん欲しいー。

チラッと携帯を見ると、4時前かー。まだまだオヤツどきじゃない!スタバでも寄ってくかな、、、って、あれ、もしかして愛??やだ、あの子何やってんのよ!?

通りに面した窓際のカウンター席で、なんと、同じ高校の愛が両手を掴まれ、捕らわれた宇宙人状態で男子に囲まれていた。えーと、ちなみに、彼女、わたし的には男子とつるんでるところが似合わない女ナンバーワン。です。

実は愛とは中学から一緒。

中学のときには、部活もやらず、あまり仲良くしてる子もいないような浮いた存在で、ちょっと近寄り難いオーラも出てたりしてたんだけど、高校受験の会場で会ったときに思いきってお弁当を一緒に食べようと誘ってみたら、なんてことない普通のいい子だった。

噂では、全国的なコンクールで賞を取ったのとらないのって話だったし、顔もまぁ、わたしほどじゃないけど美人の類だし、もっとセレブぶったというか、気の強い、ツンケンした感じかと思ってたんだけども。

実際はちょっと面白いくらいに小心者で、たぶんすごい努力家。
高校に入ってから何度か聴いた彼女の演奏は、素人のわたしが聴いても明らかに他の子とは違う、ズッシリとした存在感のあるもので。部活も入らず、特に仲の良い友達も作らず、恋愛もせず、彼女が今までコツコツと積み上げてきたものが、そこにはあった。
わたしね、こう見えても体育会系なもんで。努力家は大好きなのよ。


と、まぁ、それはさておき。窓に近づいてよくよく見ると、囲んでるのはうちの学校でも有名な、海明学院のヤマケン一派。年末にもやばそーな人達とケンカしそうなとこ見たばかりだったので、これはさすがにちょっとマズイかなぁ、、、でも、愛って、ヤマケンくんと予備校で顔見知りのはずだし、、、

ま、いくらなんでも、女の子相手にそれほどマズイことにはならないよね。
というわけで、スッと一息深呼吸をしてから、窓をノックする。

コンコンコン。

お。こっち見た。うわっ、当たり前だけどヤマケン一派もこっち見た、、、こわっ、いやいや、とりあえず、愛に確認しなくちゃ。窓越しじゃどうせ聞こえないだろうと、唇の動きで何を言ってるかわかるようにゆっくりとしゃべる。

「なに やってる の?だい じょう ぶ??」

と、言い終わると同時に、泣きそうな顔でブンブンと首を横に振る愛。
あらー。しょうがないわねぇ。まったく、手のかかる子だわ、、、




友人救出の為店の中に入ると、すでにカウンター席にはおらず、なぜか奥のソファ席に。
そして遠くから、満面の笑みでブンブンと手招きする三バカトリオと、店に入って来たわたしを見つけてホッとした表情の愛。

なんだなんだ?どういうこと??単にナンパされてたの???

そのとき、通り過ぎざまの長身の男に、「あんたは飲み物、なんにする?」と声をかけられた。
え?と見上げると見たことある顔。ついつい「あ。ヤマケン。」と呟いてしまう。

「はあ?何、オレ知り合いだっけ?」
「あ、ゴメンなさい。違うの、一方的に知ってるだけ。ヤマケンくんけっこう有名人なんだよ。」
「ふん。で、何飲むの?」
「あ、えっと、甘くて冷たいの、、、」
「はいはい。甘くて冷たいもんね。」

なんだよそれ。商品名で言えよ。などとブツクサ言いながら、カウンターに向かうヤマケンくん。えーと、、、つい勢いに押されて答えちゃったけど、何これ?もしかして今からわたし、ヤマケン一派とコンパってこと??


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