オトノツバサ | ナノ



01 アコガレのツバサ。
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高校受験の願書提出直前、短期の演奏旅行へ旅立つピアノの師匠から「今回の仕事で行けなくなったからあげる」ともらった、某ピアニストのリサイタルがわたしの運命を変えた。

その、ほんの1時間足らずの演奏時間の間、彼女の羽が生えたかのような音楽達は、どこまでも自由に飛びまわり、わたしの幼い情緒を掻き乱して去って行ったのだ。

あまりの素晴らしさに涙が止まらない。にじんだ視界の先にあるパンフレットのプロフィールには「音羽女学院、音羽女子短大卒」と書かれていた。

その後、わたしは泣きながら家に帰り、かねてから志願していた学区内の公立高校ではなく、音羽女学院に願書を提出することになる。

なるの、だが、、、



「愛ちゃん、音女受けるの!?なんで!?松楊から芸大目指すって言ってたじゃん!!」

演奏旅行から帰ってきた先生に進路の話をしたところ、あんまりな反応が返ってきた。

音羽女学院には一般科の他に音楽科があり、音大志望のわたしにとっては願ったり叶ったりな環境のはず。しかも、あの、感動的な演奏をするピアニストの母校だ。どんなにか素晴らしい講師陣がいることだろう。わたしの専攻学科の教授陣の質によっては、なんなら大学まで音女でもいいかな?くらいに思ってた。

「あ、あの、、、こないだのコンサートが、本当に素晴らしくて。彼女の出身校でしたので、、、」

「あああああああ、ダメだって!あの人は、ほとんど海外にいて、学校なんて行ってないんだから!!音女みたいなお嬢さん校卒業したって、一般企業の受付嬢やら、幼稚園の先生やら。もしくは、お金持ちの奥様やりつつピアノの先生ってとこだよ?」

・・・・・・はい?

あれほど憧れた音楽の羽。
とりあえず、わたしの背中に生えてくる気はないらしい。


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