オトノツバサ | ナノ



07 講習終了とシナモンロール。
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で、なんで、こんなことになってるんだっけ?

うちの学校でも噂のヤマケンくんを予備校で見かけてから一週間。
偶然隣の席になってみたり、一言二言話をしてみたり、後ろの席をキープしてじっくり眺めてみたりはしましたが。決して今の状況に繋がるような出来事は起きてないはず。わたしの記憶が確かなら!!


あんまり急な展開に頭がついていかない。少し冷たくなりかけたソイラテを両手に持ち、残り少ない温もりで暖をとりながらも、どうしても目の前のイケメンをチラチラと見てしまう。

今日は、冬期講習最終日。
そしてここは、予備校近くのスタバ。
目の前には、サンドイッチをつまみながらトールラテを飲むヤマケンくん。

なぜだ!?

「名前。」
「え?」
「名前なんての?」
「あ、えーと、成田。成田愛です。」
「ふーん、成田サン、ね。」

「「・・・・・」」

か、、、会話が続かない。
というか、なんかだんだん不機嫌っぽい顔に、、、なってるんですけど、どうしよう。うわー、どうしよう。
挙動不審になりはじめたわたしを見て、ヤマケンくんはハーッと大きなため息をつくと、

「あのさー、こういうときは普通聞くだろ?」と吐き捨てるように言った。
「え!?な、何を??」
「名前だよ!自分が聞かれたら、相手にも聞くもんじゃねーの?」
そこまで興味ねーのかよ、、、とブツブツ言うヤマケンくんに、

「ヤマケンくん!」
「へ?」
「でしょ?あの、知ってるから聞かなかっただけで、別に興味がないわけじゃ、、、」
「あっそ。興味が、あるわけね。つか名前までチェック済みなわけ。」

こっちに向き直し、足を組み替えながらニーっと笑った。
おお、一気に機嫌よくなったぞ。
わっかりやすっ。

ついついつられて笑ってしまったわたしの顔を覗き込み、今度は余裕の顔でニッコリ微笑み返してくれた。

ううう、わーーーー。
何この破壊力!!!

そういえば、男の子と二人でお店にいるなんて、初めてかもしれない。
思えば中学のときだって、楽器の練習に明け暮れる青春でしたし。つか、そもそもクラスメイトはこんなに大人っぽくはなかった。男子は男子、女子は女子って感じで。つきあってるわけでもない男女でお店に入るなんて、まずないことだ。で、高校は女子校だし。あああ、慣れない!この状況!!

ひたすらドギマギするわたしを見て、
「ふーん。意外。もっと冷めた感じの女かと思ってた。」と笑う。

「で、こんな時間まで何やってんの?」

そうそう、今日は2時間の講義の後、すぐに帰らずにスタバでぼんやりコーヒー飲んでいたわけで、そこに最終講義まで終わらせたヤマケンくんが合流した、と。
合流っていうと待ち合わせしてたみたいだけど、そんなことはなくって、突然、トレーを持ったヤマケンくんが「ここいい?」とやってきて向かいの席に座っただけなのよ!!って、わたし誰に説明してんだ?

「あ、えーと、う、打ち上げ?」
「はあ?講習の??」
「そうそう。我ながらよくがんばったなあ、と。」
「なんだよ、それ。」

ちょっと待ってろ、と言い残しても一度カウンターに向かったヤマケンくんがシナモンロールとソイラテを乗っけたトレーを持って戻ってきた。

「はい。じゃ、これ打ち上げの差し入れ。それもう冷めてんだろ。」

うわー、なにそれ!スマートすぎる!!
中学のクラスメイトには、こんな男の子はいませんでしたよ!!!
あまりのスマートさに、遠慮することも忘れて「どうもありがとう」と素直に受け取ってしまう。
両手で新しいソイラテを包み込み「はー、あったかい。」とつぶやくと、満足げなヤマケンくんが前の席に再度座った。

とりあえず、何か話さなくっちゃ。えーと、、、

「あーと、、、あ、あの、連れの女の子は?水谷さん。だっけ?」
「はあ!?別に連れじゃねーよ。あいつは教室で弁当食ってりゃいいんだ。」

一気にまた機嫌が悪くなるヤマケンくんを見ながら、なんとなく読めた。
ああ、そうか。水谷さんがお弁当だから、それで一人でスタバなわけか。触れられたくないところなわけだ。ふーん。やっぱり水谷さん狙いか、ヤマケン。

一瞬、ちょっとガッカリしたような気持ちになった自分に驚きつつ、だんだん状況に慣れてきたのか饒舌になってきた。意外と適応能力あるな、わたし。

「なんで誘わないの?お弁当食べても、コーヒーくらいは飲めると思うけどな。」
「余計なお世話だ。で、あんたはそれ食うの?食わないの??」
「あ、食べます食べます。」

シナモンロールは、とても甘く、疲れた身体に心地よかった。

これだけスマートに女の子に対応できるような人だもの。講義の後にお茶に誘うくらい、なんてことなさそうなのに。ああ、どうでもいいわたし相手だから大丈夫なのか。彼女のこと、さらっと誘えないほど、そんなに意識してしまうほど好きなんだろうか?


どうしてヤマケンくんの名前を知っていたのか、学校でヤマケンくんが有名人なんだよという話なんかをした後、乗ろうと思っていたバスの時間が来たので、ラテとシナモンロールのお礼を言って席を立った。

「あのさ。」
「はい。」
「携帯、メアド教えて。」
「え?、、、えええ!?」
「何その反応。食い逃げする気?」
「へ?」
「次は、あんたがおごれよ。成田サン。」

ああ、そうね。次はわたしが、、、

って、次!?あるの??そんな機会!!!


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