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「あ゛…は―――ぁ、」

その部屋を支配する音は2つ。ギィ、と縄のきしむ音、絶えず洩れる呻きとも息切れともつかない声。

声を発するのはまだ幼さを宿した少年だ。我慢できずに出す声は間隔を狭め、徐々に余裕のない音色へと変わりつつある。

それは、異様な光景だった。

天井から伸びる二本の縄。その先はそれぞれ、少年の両手首、両足首へと繋がっていた。

手首は後ろ手にされてひとつに纏められいる。同じく纏められ、固定された両足首から伸びるふくらはぎは、太股に直(ひた)と重なっている。まるで足を折りたたむように膝が曲げられ、開かないように縄が何重にも巻かれていた。

少年は、裸だった。手首や脚だけでなく、あらわにされた上半身にも縄は縦横無尽にかけられている。縄はギチギチと肌に食い込みながら、天井から吊り下げられ、えび反りでゆらゆらと揺れる少年の体重を支える。一見辛そうな体勢に見えるが、縄は肌に食い込みながらもかかる体重を分散する役割を果たしているようだった。

なにより、少年がその状況を――少なくとも痛みはないという意味で――苦痛とは思っていないという証拠、そして異様な光景を一層際立たせているものが、少年の下半身にあった。

その部分だけ、縄がよけるように掛けられているのは偶然なのか、故意なのか。縄の間からそそり立つペニスは、腹に付かんばかりに少年の性的興奮の度合いを示している。その先端からは、先ほどからはひっきりなしに漏らす声と合わせるように、とめどなくボタボタと透明な液がこぼれ落ち、すでに床に水溜まりを作っている。

「お゛、ねが――、っ゛」

目隠しをされた少年は、そこにいるのかどうかも定かでない人間に向かって懇願の言葉を口にする。

「触、ぁ、ってぇ゛…だれ、か―――っ」

少年が目をさましからどれくらい経っているだろうか。すでに時間の感覚は失った。数時間なのか、数日なのかすら、わからない。気づいたときからこの状態で、誰一人として彼に話しかけなければ、触ることもない――ただ、ある物を除いては。

コツ、と足音が響き、少年は「ある物」の予感に身体をびくりと震わせる。だが、逃げることもかなわず、近付いてきた足音に続いて腕に走る刺激に抗えない。

チク、という僅かな痛み。これで何度目かもわからないが、縄以外に、唯一少年の肌に触れていくのが、この注射針だった。

「ゃ、だ…も゛、それ、いやああ゛ッ!!」

一体それが何なのか、何の為なのかはわからない。ただ、ハッキリしているのは、それを注射されるたびに少年の身体が性的欲求に塗りつぶされていくということだ。

これ以上疼くことはないと思っていた身体がさらに熱を増す感覚に、少年は悲鳴にも似た声を上げる。すでに小指の先ほどの大きさになっていた乳首がまた質量と固さ増す。ペニスが少年の腹に向かってひとりでに突きあげ、暴れ出さんとしていた。

「ひっ、ん゛っ、あああ゛ッ!! も、無理ィ! 触―――触ってえええ゛!!!」

すでに限界を超えて、快感を欲する少年の訴えも虚しく、部屋には再び縄の軋む音と、もはや悲鳴に近い声だけが響きわたる。

そのまま、少年にとっては永遠にも近い時間が流れた。

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