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これも計算なのだろうか、月の明かりを背にすると神々しいまでに月夜の美しさが引き立つ。

浴衣が花弁のように月夜から離れていく。初めてまともに見た裸体は、これまでみたどんな芸術品よりも美しい――そんな月並みな表現すら遣うこともはばかられるような、完璧な美しさがたち籠めていた。

思わず立ち上がりそうになる私を、月夜はやんわりと制止する。だけど、衣服を脱がせようとする月夜を、 私はそのまま押し倒した。

「―――あ、」

月夜の不意を突かれた声を聞いて、私はあの、ぞくりとした感覚を思い出す。裸の月夜にとりつくようにして、全身に口づけを降らせていく。

初めこそ面喰った顔をしていたが、 私がじゃれていると思ったのだろう、次第に月夜はそれを楽しみ始める。

「ん、 ふ、光司さん――っぁ、」

わざとらしすぎない、それでいて男を惑わすような吐息。だけれどそれが私の神経を苛立たせる。私が聞きたいのは、月夜の台本に乗っていない、喘ぎ声、だった。

この少年の手玉に取られているような感覚が、どうしても気にいらなかったのだ。私とて性行為の経験がないわけではない。男としてのプライドが、この少年に翻弄されることを拒み続けていた。

ならば、と私は月夜を押し倒して主導権を握ろうとしたのだった。それでも一枚も二枚も上手のこの少年は、やすやすとかわしてくるだろう。

私は自身のプライドと引き換えに、恥も外聞も投げ出すことに決めた。
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