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12畳ほどの客室で、静かに酒を飲む。部屋を暗くして、襖を開けると三日月がしんしんと光を降らしている。その月すらも現実味がなくて、やはりここは異世界なのかもしれないと思う。

私のような客も珍しくないのだろう、月夜は私の邪魔にならないよう、そばに控えて酌をする。湯上りの少年は、備え付けのそっけない浴衣を着てもなお、色香を放っていた。酒も入って、性欲もおさまったかと言えば、そういうわけではなかった。幻想的な情景と、隣から香るせっけんの匂い。そして月夜自身から発される不思議な空気が、風呂場で中途半端に刺激された欲望をじわじわと高めていく。

それでも、何かが私をその気にさせない。罪悪感だろうか、初めての出来事に対する恐れだろうか。思い当たる可能性を挙げていくが、そのどれもがしっくりとこない。

長いまつげを伏せて、しなを作っているのは、この仕事をするうちに自然を身に着いたのだろうか。月夜に目をやると、顔をあげて、あだっぽい振る舞いなどなかったかのようにあどけない笑顔を見せる。

そして、ピンときた。このあざとい所作 の一つ一つが、私をいちいち萎えさせているのだ。

「月夜」
「うん、」

初めて少年の名前を呼ぶ。月夜は少し驚いたような顔を作ってそれに答えた。

「お願いしようかな」
「――うん、わかった。光司さん」

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