5.

何、と問いかけるよりもはやく、再び無機質な音声響き、俺はその地獄を自らの身体で思い知ることとなった。
身体中を這っていた触手の1本から、細い糸のような触手が伸びる。それが俺の屹立の根元にきつく巻きつく。

「っ────え、待、………っぁ゛!」

キュッと締め上げられた瞬間、ただでさえ充血していたのが、さらに赤味を増し、もはや赤黒く変色せんばかりだった。
痛々しい見た目とは裏腹に、より敏感になったそれは、空気に触れるだけで、脊髄が浸されるような狂いそうなほどの甘い予感を送り込む。だけど、決してその快感には手が届かない。あくまでも予感。そう、今はまだ。けれども、恐怖を覚えるほどの、甘い予感。

「っ、あ、ひ、ぃ……っむ、り、こん、なのっ……!」

空気に触れた刺激だけで嬌声が口からこぼれ落ちていく。
けれども、俺はまだ「お仕置きモード」の意味を理解していなかったようだった。
次の瞬間、目の前に突きつけられた"モノ"に対して、のどの奥から自分でも聞いたことのない攣きつり声が上がった。

「─────ひ、ぃ、…ッッッ!!」

どこから現れたのか、俺に狙いを定めるかのように、目の前に一際太い触手。次の瞬間、その先端がぱっくりと割れる。割れた先端の内側にはさらに無数の触手が、そして触手と触手の隙間を執拗に埋めるように繊毛が、グロテスクに犇めき、蠢き、絡まりあっている。その様子はこれまで身体中を這っている奴らが可愛く思えるほどだ。さらにはその奥から10本ほど、うじゅうじゅと抽挿を繰り返し、そこに差し出される物全てを引き込まんと待ち構えているのだった。

「むり、やだ、っやめ、絶対無理ッッ一ノ瀬! いちのせっっ!! お願い、っ助け、…!!」

身体が無意識に拒絶反応を起こし、俺は恐慌状態に陥った。
そのグロテスクな見た目にではない。この後俺の溶け落ちた神経に無理やり流し込まれるであろう、未知の快楽に。
俺は最後のプライドをかなぐり捨て、まるで子が親に助けを求めるように一ノ瀬主任の名を呼ぶ。

当然、奴が俺を助けることはない。
澱のような黒目が俺を単なる「研究対象」として観察している。
恐怖とも言えない、今まで味わったことのない感情が俺の全身を粟立たせた。

そういうしているうちに、細い触手に根元を締め上げられたままのそれに、太い触手が近づく。

「やめて! お願い、無理! 死ぬっ、頼む、から──!」

言葉が通じるはずもなく、しかし、まるで触手は俺の反応を楽しむかのように、ゆっくりと口を開ける。

「やめろ!やめっ────ぁ゛、ぎ────────っっ!!」

ぬちゅり、と包み込まれる感覚の後、何もかも塗りつぶすように押し寄せる、爆発的な快感の波。
つぷつぷつぷと無数の口に啄まれ、粘液にまみれているにも拘わらずまるで柔らかいブラシに延々と舐め擦られているような触感。
一番敏感になっている先端は奥から延びる触手に迎え入れられたまま、まるで無限に呑み込まれていくような脈動とともに吸い上げられ続けている。

「─────っ゛! ………───ッッ!! ──────っあ゛、──────ッッッ!!!」

嘘だ。ダメだ、これは。

気持ちいい、きもちいい、きもちいい。

気持ち良すぎて声が出ない。

息を吸うことも吐くこともできなくて、身体をのたうち回らせて快感を逃すこともできなくて、

固く固くなったそれが、柔らかくて、しかし確かな質量と密度のある何かにどこまでもどこまでも沈み込んでいくような感覚。

そして無数の触手が、今どこをどうやってなぞり、くすぐり、這い回っているのか、1本1本余すところなく神経を伝わって理解させられる。

ようやく吸った息とともに、吐き出されるのは辛うじて単語の体を成す言葉だけ。

「許し、」
「助け、」

そうこうしているうちに包み込んだ触手はぐっちゅぐっちゅと無慈悲なピストン運動を開始する。
あっという間に許容量を超えた快感が逃げ場を求めて身体中を暴れまわる。

「───ぁ、───っっ、──────っこれだめ゛ぇ゛ッッッッ!!!!!」

ようやく振り絞った言葉も、研究所に虚しく響き渡り消え失せた。

「阿知谷さん、止めてほしかったら『俺のガチガチに勃起したやらしいチンコを触手でたくさん苛めて思いっきり射精させてください』ですよ」

言えるわけねえだろ!とすら言うこともできず、のたうち回るほどの快感に、指一本も動かすことができず、意識を失うことも叶わない。

「さすがにここで死なれちゃ困るから、一応裏技を教えてあげるけど、一字一句同じセリフが言えない場合はそれ以上に屈辱的な言葉を言えればクリアということにしてある。屈辱的な言葉かどうかはAI判断だけど」
「お願ッしますっ、!! しゃせ、射精させてっく、───っぁっひ、っあ゛、も゛、無理、ぃッッ、やめてっ出したい゛!! 俺のチンコいじめ、てっくだっぁあ゛!! あ゛っだ、ぁあ、あ゛あ゛っおねが、しょく、しゅでいじめて、っくださッッぁ、っん゛っあッだめそれだめっ、ああ゛っむ゛り゛ぃ!! 射精させ、っくださッッ、」

ようやく唯一の逃げ道を示された俺は、一も二もなく飛びついた。先ほど全て捨てたと思っていたプライドの、最後の残りかすのような何かが剥がれ落ちていく。

「おねがっこんあっ言っても、だめ、なの、ぉッッ!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ───ださせてっ、お願いしま゛っぁあ゛、おれのっぼっきちんこ、しご、てくださっひ、いっあ゛、あっぁっあっあッッ、あっ、ぃッ、しょくしゅで、ぇっぐちゅぐちゅに扱き、あげっ、てくださ───ッめちゃくちゃにしてくださっは、あ、や゛、ぁ゛、あ、あっ、あ゛、」
「おねがっ、お゛かしくなる゛ッおかしくなる゛───っか、ら゛ぁッッっあ゛ッあっあ、っい゛、ーーっぎ、あっ」
「ちんこ、いじめてくださッッーーがちがちにぼっき、したやらし、っいちんこ触手でいじめ゛でぇっおねがっしま゛っあ、だめ、だめ゛ぇっだめ、っむりもっと、いじめてくださっあっぐちゃ、ぐちゃにっ扱き上げてーーっあ、ひ、や゛め゛ッ、しゃせ、射精させて、しゃせいしたい、」

「……まあ、合格かな」
『お仕置モードを解除、射精フェーズに移行します』

どう考えても一ノ瀬主任のさじ加減をきっかけにモード切り替えの音声が流れる。
待ちわびていたその台詞に安堵しかけると同時に、僅かに残っていた俺の理性が今はヤバいと再び警報を鳴らす。
これ以上の快感に耐えられる自信がなかった。
それでも、これ以上快感が蓄積すればいずれにしても俺は壊れてしまう。

「っあ、ま゛っ──今、だめっ」

俺の言葉が聞き入れられるはずもなく、根本を締め付けていた細い触手がしゅるしゅると解けていく。
と、同時に触手がこれまで以上に容赦のない動きで射精を促し始める。

「あ゛、──な゛っでぇッッ、とれった、のに゛っ、出な、あ゛ッ!!」

これまでぎゅうぎゅうに締め付けられすっかり狭くなってしまった尿道が、あれほど渇望した絶頂を阻む。その奥からせり上がってくる精液にじわじわと押し広げられる感覚は、まるで普段の射精を何十倍にも引き延ばしたかのような、終わりのない絶頂。そして、この先に待ち受ける本当の絶頂に本能的に恐怖する。

「っイ゛って、る゛のに、また、イ゛く、っぁあ゛!! っっあ゛! あ゛っっ、あ゛っ、ああ゛ッッ、」
「やめ゛、いま、ちく、っび無理っ、あっひ、ん゛っんっあ゛っ、め゛っぇ──っっ、っぁ、ぁ゛ッ」

ここにきてすっかり開発が完了した乳首をコリコリコリと一定の間隔で刺激される。
すっかり出来上がった今の身体なら、それだけで達してしまう刺激だった。
それでも、尿道を通る精液は、じわじわとナメクジのようなスピードで這い上がる。
にも拘わらず、ずっぽりと包み込んだ触手は容赦のないスピードで扱き上げ続ける。

「あっあ゛っあ゛、あ゛っ!! イ゛、グゥっ、イク、イクぅ゛、ぃ、くッ、まだ、イってぇ゛──っい゛、っっ!」
「はや゛、ぐ、イって、おね゛、がっ、も゛っいぎた、…っく、な、ぁっ、ん゛っ、おわっ──で゛ぇっ、」

自分でももう何を言っているのかわからない。唯一自由になる首から上をめちゃくちゃに振り回しても、快感がおさまるどころか、1秒、 0.1秒を過ぎるごとに耐えがたく塗り重ねられていく。
尿道の一番狭まった部分を精子がゴリゴリと通り抜けていく。
反射的に腰が引けて押しとどめようとしてしまう快感。けれどもそこを越えた瞬間、抗えるはずもない快感。あまりにもあっけなく射精に導かれた。

「ア゛っくる、出、っい、ぐ──っひ、ぃ……っぁ゛、っぁあああ゛!!」
「だ、め゛っまだ、出っあ゛っでるッ、っも゛、すご、まだっ出、あ゛っ無理、ぃ゛ッッ、あっまだでるっ、あ゛っ出、っあ゛っ……ッ!!」
「あ゛っあ゛っあ゛っあ゛っあ゛、ぁっああっあ゛あああああ゛、──ッッッ!!!」

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