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※
それから15分余り、休むこともできずに俺は男の指に弄ばれ続けた。その間、抵抗もせず口をだらしなく開けたまま愛撫に身体を震わせる俺を、男はどう思っていただろうか。
すっかり思考の麻痺した俺はとにかく周りの人間にバレたくないということに気をとられて、「我慢する」という一番間抜けな選択をしたのだった。
でもそんなことはもうどうでもよくて。あと数分で着く、もう少し我慢すればこの地獄から解放される。それだけを支えに、ドアに体重を預けながら見慣れた風景が流れていくのを焦れながら見つめる。
「ふっ……ぅ…ぁ、」
全く止む様子を見せない指の動きは、むしろより繊細に、緩急をつけた動きに変わっていく。あと1分、あと1分、あと1分――。もうこれ以上反応したくなくて、心の中でお経のように唱える。
降りる準備を始めた人の流れが俺をさらにドアに押しつけた。当然男の身体もさらに俺に密着するかたちになって、思わず熱い息がもれた。クスクスと笑うような吐息が耳をくすぐって、俺の理性をかき回していく。電車が減速を始める。早く早く早く。ドアが開くその時、
「…触ってほしい?」
開いたドアの向こうから、駅のホームのざわめきが車内に流れ込んできているはずなのに、その熱を帯びた声だけがやたらハッキリと俺の耳に響いた。
その意味を理解する前に条件反射で動き出した脚が、俺のほてった身体を電車の外に運んでいく。2歩、3歩進んで、ようやく硬直した身体を捻って振り返ったけど、すでに電車のドアはしまるところだった。
「なに、それ」
ぐったりとした全身を駅構内のひんやりした空気が包んでいく。だけど身体の芯の火照りはちっともおさまらなくて。俺はある場所を目指してふらふらと歩き出した。
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