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やがて動きに慣れ、少年の呼吸がようやく追いついてきた。しかし男は、呼吸が楽になった分の余裕を目ざとく追いつめるように、それまで一定だった手の動きを徐々に早めていく。
「あ、あっ、ああっ、ああっ、ああ゛っ」
出すときは絞り上げるように、入れるときはねじ込むように。動きが早くなっても男の手の動きが雑になることはない。むしろ、少年の性器に筒の内部の形を覚えさせるかのように、吸い付かせるようにして上下にスライドする。
「ああっ、あ゛、あ゛、っん゛、やっあ゛っも―――っぉ!」
少年を支える縄が軋む。固定されていない両膝が快感を逃すように左右に離れたり近づいたりを繰り返す。それは、自ら射精を促すポンプのような役割にも見え、男たちは少年の猥らな様子に舌鼓を打つ。
「ああ゛! も…ぅ、だめ! ――ん゛っぅ゛っぁッ…も、い゛ッ」
ギィ、と鳴っていた縄の音が、ギ、と小刻みな間隔に変わる。それはそのまま少年の限界の近さを表しているようで。
「ああ、ああ、ああ、ああ゛、あああ゛っ、」
ぐちゅり、ぐちゅり、ぐちゅ、ぐちゅ。
男の手の動きが、少年の、今にも溢れ出さんとする快感を少しずつ詰めて、積み上げて、固めていく。
「や、あ゛、も、っ…! ……ッ! ………ぁ…………ッぃ、……!!」
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、
だくだくと溢れ出す先走りと、ローションが混ざって、少年の性器全体を揉みしだいていく音。だんだんと律動的になるそれは、少年でなくとも耳に届くだけで人を淫靡にさせる、脳みそをとろかす効果音だった。
「い、ぁ、イ――っも゛ッくる、きちゃ、っぁ、あ、あ、あ゛」
この先にあるものを少年は知らない。だけど、彼の知識とは無関係に身体は勝手にその時に向かって準備を整えていく。血流が増し、毛穴が開き、汗がだらだらと流れ出す。身体全体がポンプになったように収縮を繰り返し、快感を得るための器官だけが取捨選択され、研ぎ澄まされていく。
「っぁ、すご、キ、ちゃ――すごい、の、くるッ…のぉ、ぁ、あっああ゛」
溶けてしまった脳みそがとろとろと口から零れ落ちていくように、細切れの言葉が吐き出されていく。
「きもち、っきもち、い、の、あ、ほんとにっくる、ぁ゛っだめ、ゆる、許っ、あッぁあああ゛!!」
ヒダで、突起で押しつぶされる性器がぐっと大きくなり、更に自らを擦りつけるように筒の中を押し広げる。
それに合わせて、筒を持つ手に力がはいり、抽挿が早く、小刻みになっていく。
縛られた少年の体が、縄を引きちぎらん強さでこわばる。ぐ、と背骨がそらされ、白い喉がさらけだされた。
「あ゛ッ、ぎ、ぃ――――――ッッッ!!」
反らされた少年の身体が硬直。一瞬遅れて押し寄せた波に身体がぶるぶると震えだす。
「ッ―――!」
男の手の中で性器がどくどくと跳ねる。この時のために準備をしていた身体が悦びに震え、神経がぞわぞわと立ち上がる。根こそぎ絞り出すような男の手の動きに逆らえるはずもなく、真っ赤な先端から白濁が吐き出された。快感で喉が締まり、息を吐くことも吸うことも、もちろん声を上げることできずに、男の手と自らの欲望の解放に翻弄される。
「―――――――ッ、っ――ぁ゛―――――ッッ!!」
小刻みだった震えが、射精を続ける性器を中心に大きくなり、淫らに腰がうねっていた。
硬直から痙攣が治まるまで、数十秒。最後の一滴を絞り指すように太ももが細かく揺れた。ようやく終わったと、安堵するように少年の頭がようやく下がる。
「―――――ッ!!?」
その顔がうなだれる前に目が見開かれる。治まった少年の性欲を再び目覚めさせるように、男の手が再び動き出していた。
「――や、ぁ、ぁ、あっ、ああッ、あ゛!!」
つられて声を上げていく少年は、まるで、機械のようにボリュームを無理やり上げられているようだった。
「やああ゛!も、やだッ、ぁ、ああ゛!―――んぅ、う゛!!」
体力を使い果たしてもなお強制的に射精させられる。体に勝手に力がはいり、その時のためにまた準備に入る。
少年はようやく気づく。ようやく終わったのではなく、ようやく始まったのだと。
朦朧とする意識の中で、またチクリと針の刺さる痛みが少年を現実に引き戻した。
(次:あとがき)
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