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「ぁ――あ…っ、ぁ゛」

体力を使い果たし、頭の先からつま先までどうしようもない疼きに埋め尽くされ、正気を失いかけんとした少年に、新たな刺激がふりかかった。
ぽたり、とそれは文字通りふりかかる。

「―――ッッッ!!!?」

背中に落ちたそれは冷たく、たった一滴は強すぎる衝撃となって少年を襲った。すでにえび反りになった身体がさらに反って、ブルブルと震えている。

冷たかった液体はしかし、少年の身体に落ちるとあっという間にその熱に暖められ、トロトロと背中を滑り落ちていく。少年のわき腹を通る頃にはすっかり温かくなり、まるで人の指がでなぞられているように感じられた。

「あ、なぁ、これ…ぇ」

さんざん焦らされ、研ぎ澄まされた少年の神経にはそれだけでも耐えられない感覚だった 。身体をこわばらせ、ただその液体の軌道が通り過ぎるのを待つ。

しかし、最初の液体が床に落ちる前に、新たな雫が背中に垂らされる。

「ひ―――!! ぁ、待――って…まって、ゃ、待って待っ――!!」

2滴、3滴と垂らされた後は、もう止まらなかった。雫は水流となり、少年の背中にまんべんなくまぶされていく。とろとろとした感覚が背中を覆い、ようやくこれがローションと呼ばれる物なのだとわかるが、その頃には少年はそれどころではなくなっていた。

「ぁ、っん、は…あ゛っ! や、ゃ、変…も……ッ! へん、あつい、…熱、いぃ゛」

最初の一滴のような鋭い刺激こそなくなったが、とぎれることなく単調に背中にかけられていく粘液は、少年の身体の奥の熱を呼び覚ましていく。身体中をなぞられるような快感になりきらない感覚が、呼び覚まされた熱を逆撫でていく。

燃えるようなもどかしさのなかで、生殺しにされる苦しみが少年を灼く。
体中の神経がローションに溺れそうになった頃、降りかかるそれがぴたりと止んだ。代わりに、掘り起こした熱を逃がすまいとでもいうように、すかさず少年の身体中を新たな感覚が襲った。

「あっ!! だ、め―――ぁああ゛!!」

複数の手が伸び、少年の体をまさぐりはじめたのだ。たっぷりと振りかけられたローションをまんべんなく塗りつけていく。

背中に溜まったローションをたっぷりと浸した無数の掌が、少年の陶器のような肌に密着する。そのまま、マッサージをするように、ゆっくりと、ねっとりとした動きで少年の体を滑っていく。脇を通り、腹をさすり、骨盤のおうとつを味わうように動かされる。腰を撫でさすり、少年の肩甲骨に向かって押し上げるように移動していく。

柔らかな指の腹で引っ掻くように首筋をたどり、床に向いた身体の前面へと繊細な動きで這いまわる。

下半身に回された手は、太ももを緩慢な動きで膝から股関節へ、股関節から膝へと往復する。

目隠しをされて視覚を奪われた状態で、代わりに敏感になった皮膚が掌の動きひとつひとつを拾い、脳みそへと事細かに伝えていく。

「ああっ、あっ、あ、ああ゛っ、あああ゛ッッ!!」

身体じゅうを這いまわる掌が1mmでも動くたびに、少年の身体がひくんっ、と跳ねる。腹筋は彼の意志とは関係なしにへこへこと波うち、反り返った性器と擦れて、真っ赤に染まった先端にローションがなすりつけられていく。

「あ」の形で開いたままの口が、壊れた拡声器のように意味のなさない音を垂れ流す。
しかし、待ちわびた快感に悦びの声を上げていた少年は、まだ身体にわだかまる物足りなさに気付く。

無数の手は、肝心な場所――触れてほしいと一番待ちわびて、その面積を大きくしている場所――を徹底して避けている。そのそばを通るときだけわざとゆっくりとした動きになることが、それが故意であると裏付けているかのようだった。
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