白旗あげる
最近のゆみひこさんはなんだか変なのです。ゆみひこさんを迎えに行くといつも忙しそうにしているし、車の中でもぶつぶつ資料を読み上げているし、それに、ちょっと、かっこいい。
少しだけ、寂しいものです。
ゆみひこさんは、変わってしまったのでしょう。
きっと、いいことなのでしょう。
それでも寂しいと思ってしまうのは、私がゆみひこさんをだいすきだからなのでしょう。
「ゆみひこさんゆみひこさん」
「ん?どーした?」
ゆみひこさんにぴったりとくっついて座ります。ゆみひこさんは資料ではなく、私を見てくれます。
「手、出してください」
「手?」
「大きさ比べです!勝負です!」
「ナナシの手、小さいだろー」
ぴと。
ゆみひこさんの手と、私の手が重なって、ゆみひこさんのあったかさが伝わってきます。心臓がちょっぴりうるさくなった気がしました。
「ほら、オレの勝ちー」
「む」
無邪気に笑うゆみひこさんの指に自分の指をきゅっと絡めました。繋いだ手は、私たちの間でぴたりと止まっています。
「な、なんだよ」
「えっと……つかまえました」
「……なんだそれ」
ふわふわ笑うゆみひこさんはやっぱり私のだいすきなゆみひこさんで、それなのに今まで我慢していた寂しさが飛び出しそうになって、噛んだ唇が少し切れそうになって
「ナナシがオレをつかまえるのより、逆がいい」
繋いだまま、ゆみひこさんの腕の中で小さくなっていたのです。ああ、驚いて、声が出ません。
「え、嫌かよ」
「ち、ちが、ちがいま」
「なんなんだよー」
えへへ、笑いながら空いた手をゆみひこさんの背中に回します。
「ゆみひこさんがかっこよくてつらいです」
「なんだそれ」
「恋の病です」
白旗あげる
(あなたにはかなわない)
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ちょっと短いですが7000HITリクエストのゆみひこさん夢です。
そぼろさま、ありがとうございました!
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