しあわせになったの




ぷに。

信楽さんのほっぺに人差し指をつきつけた。


「どうしたのナナシちゃ」
「いぎあり」
「……」
「信楽さん、いい匂いする」

抱きついて、首元に顔を埋めた。
二人並んで座ったソファが小さく軋んだ。

「オジサンのくせに」
「ひどいなぁ」
「誰とハグしたの」

耳元に溜息がかかって、無言。
だから、そういうの、やめてよ。

「ナナシちゃん」
「なぁに」
「妬いてる?」
「ううん、」

さついがわいた。
そう言ったら頭をくしゃくしゃ撫でられた。

「たてゆき」
「名前で呼ばれるとなんだか」
「私のものになってよ」

私の方を向いてくれていなかった信楽さんが、私の方を向いて抱きしめてくれた。
知らない香水の匂い。
私の唇の血の味。
ぺろり。

「私だけのじゃなきゃやだ」
「ワガママだなぁ……オジサンはモノじゃないんだけど」
「私は信楽さんだけのなのに」

信楽さんの喉が動いたのを見て、そこに触れるようにキスをした。
すると信楽さんが笑ったからムカついてデコピンをした。

「困ったなぁ」
「なにが」
「オジサンもちょっとおしゃれしようとした結果がこれだよ」
「ぷっ」

思わず吹き出したらまた髪をぐしゃぐしゃにされた。ひどい。

「信楽さんはふぁぶりーずとかりせっしゅでいいよ」
「わ、ひどいなぁ」

それかわたしのにおいって言ったら



しあわせになったの


(うわきなんかしたらゆるさないんだから)

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