ぜんぶひっくるめてさ




「で、めそめそしてたわけだ」
「してねぇ!」
「あ、ほら、また泣いてる」
「泣いてねぇ!」

アホのゆみひこくん、パパが逮捕されてめそめそなう。
私もゆみひこくんのパパには何回か会ったことあるけど、すごい人だったなぁってことだけ覚えてる。すごい人としか言えない。ゆみひこくんのパパとは思えない。いや、ゆみひこくんのパパがああだったからゆみひこくんはこうなんだね。
だからね、めそめそするのも仕方ないと思うけど。
あれから1週間も経ってるよ?いい加減めそめそやめようよゆみひこくん。
腹が立ってゆみひこくんのふにふにほっぺを爪を立てながらつねる。

「いてててて!」
「でもゆみひこくん、ほんと、よかったね」
「何がだよ!」
「ゆみひこくんが駄目検事でほんとによかった!」
「だ、だめけん、じ、」
「だってゆみひこくん、まだ誰も有罪にしてないでしょ?」
「え、あ、」
「よかったねー誰かの人生台無しにするくらい他人に甚大な被害をもたらす程には影響力のないちっぽけな人間でよかったねー」

いつになったらゆみひこくんの涙は枯れるのかしら。
つねったままの私の指先が濡れた。ゆみひこくんの頬を爪を立てたまま包む。

「さよならゆみひこくん」
「えっ」
「はじめましてゆみひこくん」

私の言ってることにくるくる表情を変えるゆみひこくんの腕を勢い良く引き寄せて強く抱き締めた。

「ばかゆみひこ。あんたまだ若いんだからこれからがんばれるでしょ。ミツルギ検事に喝入れてもらったんでしょ。しゃきっとしてよ」
「お、おう」
「だからいつまでもパパの話ばっかりしないで」
「……ナナシ、妬いてたのか?」
「うっさいばかゆみひこ」

そんなつもりで言ったわけじゃなかったのに、もしかしたらそんなつもりで言っていたのかもしれないと気付かされて顔が急に熱くなった。
ゆみひこくんの肩に顔を押しあてるといっちょまえに私の頭を撫でてくれた。

「ばかゆみひこ」
「ばかって言うな!」
「ばか、ばか、すき」



ぜんぶひっくるめてさ


(きみがだいすき、これからも)

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