三通目

拝啓 苗字名前様

 雨に映える紫陽花の花も美しく咲き、今年も梅雨の季節がやって参りましたね。
 先日は取り乱してしまい、紙の上ではあるものの、見苦しいところを見せてしまい申し訳ない。「田舎だから常連さんは、私よりもウンと年上の人たちが多いので安心してください」とのことで、少しだけ安心しました。少しだけ。けれど、俺がどれだけ君のことが好きなのかは覚えていてください。好きで好きで堪らないのです。今だって、すぐに君に会いたいし、文明がもっと開発されたのならば、簡単に君に会えて、こんなふうに知らない誰かへ対する嫉妬の思いなんて知らなかったのにとさえ思ってしまいます。駄目ですね。
 こちらも梅雨入りし、雨が降る毎日ですがこんな日は家の中でみんなで双六をするのがもっぱらの日々です。双六はいつも決まって禰豆子が一番始めに上がります。やはり女の子ですね。俺はサイコロを振ると、決まってイチやニの小さな目ばかり出て、何度やっても、なかやか一番には上がれません。
 鴉に手紙と一緒に持たせてくれた御守りをありがとう。懐に入れて大切に持ち歩こうと思います。名前の手作りだと聞いて、料理に裁縫にと、本当に器用で出来ないことを探す方が難しいのではないかとさえ思います。俺は昔から裁縫は、母さんや禰豆子に任せっきりだったので得意でなく、名前のように御守りを作ることは出来ないので、その代わりと言ってはなんですが、君の幸せを俺はいつでもここから願っています。
 雨上がりの空に、君の好きな七色に輝く虹が架かっています。余りにも綺麗なので、名前の住んでいるところからも同じ虹が見えたらいいなと願っています。
敬具
竈門炭治郎

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