ニ通目

拝啓 苗字名前様

 新緑が深まり、さわやかな風の吹く季節となってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 お手紙うれしく拝見いたしました、ありがとうございます。実家の小料理屋を手伝っていると聞き、毎日が忙しい日々なのではないだろうか。俺が好きで文を送っているだけなので、忙しい時は無理して返事は書かなくても大丈夫だよ。それよりも君の体調の方が心配です。店に顔見知りの常連さんも増えて来て話をするのが楽しい、と手紙に書いてあったが、常連さんは男な人なのだろうか?名前は誰にでも優しいからきっと好いてくる人が沢山いるのではないかと俺は不安です。住んでいるところが近ければすぐにでも君のところへ飛んでいくけれど、こればかりは仕方がない。男の人はみんな猪のようなものなのです。くれぐれも気をつけるように。
 最近は、善逸が自分の自伝を書き始めました。『善逸伝』というそうです。善逸が鬼殺隊になってからのことを自伝にするらしく、少しだけ読ませてもらいましたが、『初めて会った時から禰豆子ちゃんはまるで夜に浮かぶ太陽のようだった』『禰豆子ちゃんは今日も可愛い』と、禰豆子のことばかり書いてあって本当に自伝なのか、と不安になりました。炭治郎も未来の子孫の為に書けばいいのに、と強く執筆を勧められましたが、俺はそんな大層な人間ではないし、それに君へと送るこの手紙が、俺の君への想いが消えずに形として残れば、俺はそれで十分なのです。それならば、いっそのこと俺と君との恋文集でも書いてしまいましょうか。そんなことを言ったらきっと君は恥ずかしがってやめてよ、と言うのでしょうね。
 季節の変わり目に、どうか体調など崩されませんように願っております。
敬具
竈門炭治郎

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