十一通目

拝啓 苗字名前様

 家の近くで雪解けと共に顔を出した蕗の薹を見つけ、ひと足早い春の訪れを実感しました。
 先日は、ご両親に俺のことを紹介してくれてありがとう。その日は家にまで泊めてもらって、却って気を遣わせてしまい申し訳なかったです。二人とも俺たちの結婚を承諾してくれただけでなく、心から祝福してくれて安心しました。とても素敵なご両親ですね。あの二人に名前は育てられたのだと思うと、君の仕草や性格の全てが府に落ちて、納得してしまいます。お会いする前から「二人とも私に似ているの」と君は言っていましたが、本当にそうでした。
 名前とお母さんが夕餉の準備をしている間、君のお父さんに名前の小さい頃の家族写真を見せてもらいました。写真の中に映る君の大きな黒い瞳は、今と変わっていなくて堪らなく微笑ましくなりました。君の小さい頃の写真を見ながら、この時はこうだった、あの時は、と話すお父さんを見て、本当に名前は二人から宝物のように大切に育てられたのだと肌で感じ、そんな大切な宝物をお預かりして、俺が独り占めしてしまっていいのだろうか、と少し申し訳なくもなりました。今度、二人で町に写真を撮りに行こう。毎年必ず写真を撮っていこう。きっと、それがいい。二人の記念日、子供が出来た時、そんな節目節目に撮っていこう。そして、俺たちの子供に大切な人が出来た時、名前のお父さんのように、俺は君との子供がどんなに大切なのかを伝えてみせるんだ。もちろん2番目、君の次にだけど。他にも沢山お父さんと話をしました。どんな話をしたかは名前には内緒です。所謂、男同士の話という奴です。お二人にどうぞ宜しくお伝えください。
 今度は名前のことを俺の父さんと母さんと弟、妹たちに紹介させてください。声は聞こえないけれど、きっと心から祝福してくれると思います。
 まだまだ寒さが残ります。どうぞ、温かくしてお過ごしください。来月、君がこちらへやって来るのを楽しみにしています。
敬具
竈門炭治郎

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