文通相手 鱗滝左近次の場合

謹啓 鱗滝左近次様

 すっかりご無沙汰いたしまして、申し訳ありません。
 この度、予てからお話をしておりましたように、恋仲であった苗字名前さんと夫婦になることになりました。籍を入れるのは来年の春に彼女がこちらに来てからになりますが、まずは鱗滝さんにと、この度のご報告に至りました。二人で話し合いをした結果、祝言は挙げないことに致しました。俺も彼女も、あまり派手なことは得意ではないのです。彼女の花嫁衣装を見たかったという欲は少しありますが。
 桑島邸での禰豆子と善逸の祝言の折、名前も祝いの席に出席をしていたので鱗滝さんも彼女のことはご存知かと思いますが、名前との出会いは鬼殺隊でした。俺と同い年ではあるものの、選抜は俺より一年早く突破して合格していたので、知り合ったのは合同任務です。彼女は日本人特有の艶やかな黒髪と黒い瞳が特徴的で、性格は優しく控え目で奥ゆかしく、かと思えば一度決めた事は曲げないような芯の強さも持ち合わせているのです。俺はそんな彼女だからこそ、好きになったのだと思っております。俺には勿体ないくらいに素敵な女性です。きっと鱗滝さんも彼女のことを気に入ると思います。
 諸々が落ち着きましたら、二人で狭霧山の鱗滝さんのところまで御挨拶にお伺いしようと思っております。両親を亡くした俺と禰豆子にとって、鱗滝さんはもうひとりの父親のような存在であると、勝手ながらに慕っております。どうかこれからも俺たちのことを見守っていただければ一層幸いでございます。
 何卒、ご自愛専一にてお願い申し上げます。
敬白
竈門炭治郎

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