どことは言わないがそれが確かに夢や奏、姫夢の耳にしっかりと安堵させて渇いていた星欠片が潤った。
星欠片を呼ぶ誰かたちの声と、呼ばれた星欠片の持ち主自身の声が重なって、心が織られ、そうして生命は生命足り得る。
これが正しい生命の在り方。
一際光が星欠片を芯に強く瞬いた。
「……良かったのだ…」
「にゃっ」
ほぅ、と金春色の瞳をゆったりと喜びに細めた姫夢の吐息に合わせ、素直に元気に嬉しさを声に出す奏の前にふわりと小さな小さな、小石程度の精霊が笑って会釈した。
“想詩の精霊”その中での星月の蜜を花に届ける役割の精霊。
夢はにこりと小さく笑んだ。
星詩いの闇夜は小さく笑んだ。
「今度は疲れきってしまう前にいらしてください。またお友だちやご家族さんに怒られてしまいますよ?」
照れたように笑う精霊は、夢の言葉に素直に頷いて、それこそ蜜のように甘さを残して消えた。
これが、星詩いの闇夜。夢の役割。
想詩の精霊は彼女の詩によって生命を合わせられる。
針が糸を通すように、欠片が形になるように。
「!ままさま、あれ……」
「……月星の蜜…ですね」
「きっとままさまにお礼で持ってきてくださったのだ」
「おーっ!ねーね!しゅごいーっ♪」
「………」
それから少しして、お礼として澄み色の瓶に月星の蜜が置かれていたと言う。
「星詩いの闇夜」、了
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