浴びた光を受けて、継ぎ損ねたと憂う白髪の彼女の水色の瞳と同じ色の光を白い髪に瞬かせる螢のふわふわとした小さな手がぐぐっと伸ばした背筋から上がってきてぺちりと金色の彼の額を捉えた。
一瞬何が起きたかわからなかったが、目の前の大きな紫色の瞳が難しそうな顔をしていることに頬を緩ませる何かが脈打ったのがわかった。
この感情をなんと言うのか。金色の彼にそれはわからない。
ひょいと小柄な体の脇に両手を差し入れ、くすくすと笑う。
ぎょっとした螢の表情がまた脈を生む。……頬が緩むことに覚えるこれは悪い気はしない。
全く、感情は難しい。
抱き上げても螢の身長より長い白い髪はファーカーペットの上を泳ぐ。
「どうしたの、螢ちゃん。俺の額に何かついてた?」
んー?と小首を傾げて金色の彼は螢に訊いてみる。螢には大きすぎる薄紫色の肩掛けが螢の心境のように一緒に揺れた。
んー……と悩みに悩んで暫し。
「わからぬ」
ぴしゃりと言葉少なにそれだけを言い、同時に金色の彼の額から手を離した。
あらら?と笑う金色の彼から抜け出すように離れると螢はふわりと浮遊してくるりと背中を向けた。
小さな背中が右往左往に忙しなく方向を変える。ソファーとテレビの方向、キッチンの方向。細かく言えばその間にあるもの全て。
どうやら何かを探しているらしい。ひとりで頑張れるうちはとことん頑張る質の螢の背を見ながら鋭すぎる光を持つ金色の瞳を細めた。
自身の存在と同じく、ただの刃でしかない金色。
「螢ちゃん、浮いたまま移動するなら低空飛行でねー?歩いたら危ないから」
「わかっている。我が母とお約束しているのだ」
つん、と強くすぱりと言い放った螢はきちんとその約束通りに部屋を移動して何かを探す。
集中力が、何故だか今日は酷く薄い。
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