「安心するんだから仕方ないよねぇ?……あ、卵がある」

「安かったんですよぉ?ふふーっ♪明日のおやつはケーキをお願いしたいです」

「そのために買ってきたのかあ……」

別に良いんだけどねぇ、とへにゃりと笑いながら金色の彼は受け取った買い物袋を持ってひとつひとつ冷蔵庫に入れていった。

その金色の彼の傍、台所からマザコン対片想いが起こす白髪の彼女争奪戦を若草色の彼女は観戦する。

ぽふりぽふりと、赤い彼が白髪の彼女の膝を叩いて、しきりに腕を引っ張る螢に笑いかける。

「ほら、螢ちゃんの特等席はきちんとあるだろう?ここに座りゃあ良いじゃないか」

「そなたがいなければなっ!良いから我が母から離れてもらいたいっ!赤っ!!」

「………螢?母の膝は空いているぞ?おいで?」

「赤はいらないのです、我が母」

「……?」

「ははっ。可愛いなあ螢ちゃんは」

「撫でるな赤っ!!」

しゃーっ、と威嚇する子ねずみのような螢をただじゃれて来ている子同然に頭を撫でてあしらう赤い彼。

この家で一番の長身長であり、白髪の彼女の次に年長者な彼はもう長い間、数えるのも気が遠くなるほどに長く長く………報われない、報われることのない片想いをしている。それこそ螢が生まれる前から。

しかし身内以外、誰がどう見ても平等に……片想いの欠片すら見せていない赤い彼の常なのだが、

「我が母からはーなーれーるーのーだーっ!!」

恋すら知らぬマザコンの螢には、どうやら隠せていないらしい。敏感に、過敏に赤い彼の気持ちを螢は感じ取っている。

ぎゃあぎゃあと母を取り返すべく奮闘する白髪の紫瞳の子と、じゃれてからかって軽くあしらう赤い彼。

「…金のお兄さん」

「なぁにー?」

「我が家は今日も平和ですねぇ…」

「今日は肉じゃがだよー?君が大好きほくほくじゃがいもたっぷりの」

「お手伝いしまーすっ♪」

ただそれを傍観し、微笑まし気に水色の瞳をほわんと柔らかくする白髪の彼女にやれやれ、と肩を竦めながら若草色の彼女は本日のバトルを適度に楽しんで、我関せずな金色の彼の手伝いにまわるのだった。

夕飯が出来るまでこの戦いは続く。







―了―






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