恐らく装飾品(結紐や肩掛け)を変えてくれないであろう我が子でも、持っているだけでハロウィンに参加しているような気分になれるもの。
あれを持ってもらうだけできっと可愛い。
白髪の彼女はとてて、とそれを螢の有無も訊かずに買いに走った。
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「ぷりんとくらぶ?…何なのだろうな…これは…?」
こてり、と俗に言う『プリクラ』の前で白髪の彼女はふわふわした髪を揺らして首を傾げる。
螢も一緒に「何なのでしょうね…?」と三つ編みを揺らし、薄紫色の肩掛けを揺らし、一緒に首を傾げた。
螢の小さな腕には、パンプキンの形を模した小さな小さな籠。その中にはお菓子が数個入っている。
先ほど白髪の彼女が購入した、ハロウィンに参加できそうな小道具。
これを小さな腕に提げている螢は、親ばかであるのはわかっているが可愛く見えた。季節のイベントに参加する、年相応の子どもである。どこからどう見ても。
じぃー……と通称プリクラと呼ばれるその機械を見ている我が子に倣い、共に同じ場所を凝視する。
どうやら、これは写真と似たような機能らしい。
撮ったものをその場でプリントしてくれるようだった。
この手のものを間近で見ることが珍しい白髪の彼女は「ほぉ……」と機械相手に感心する。今時の機械は遊びのものでも大したものだ。
「……携帯にも画像が送ってもらえるのか…。……螢だけのものなら送って欲しいものだが…」
薄紫色のカーディガンのポケットにある携帯を頭に思い浮かべながら、白髪の彼女はぽつりと呟く。我が子を待ち受けにしたいと思うのは親の心理ではなかろうか?
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