心なしか、少し不機嫌そうにも見える。
ああ、洗顔をするためにここに来たのに他のことに意識を向けていては
「そうだな螢。お顔が気持ち悪いな」
うむ、と頷いて白髪の彼女は螢に笑んだ。
……因みに、螢の機嫌が悪くなったのは明らかにやきもちであるのだが、そんなマザコン心に白髪の彼女はもちろん気付くわけがなかった。
「いやいやいやぁ……今の螢ちゃんのは明らかにやきもちさんだったよおばあちゃん」
「む?そうなのか?………って、」
その第三者の声は玄関から聞こえ、さも当たり前のように頷いた白髪の彼女は声の主の方をゆるりと見て、我が子をむきゅりと抱きしめた。
螢の顔を自身の胸元に押し付け、その第三者……金色の髪と瞳を持つ(見た目)青年の姿を見せないようにする。
毎度のことで、彼の仕事上申し訳ないのだが、少々子どもには悪影響な気がしてならない。
「自分たちがつい最近までそうだった」のにも関わらず、そう思うのはやはり親になったからだろうか。
……まあ、とりあえず、だ。
「その服にそんな赤い模様はあっただろうか?童(わっぱ)」
「うんー?俺のじゃないよ?」
「そうかよくわかった。とりあえず風呂へ行け風呂に」
螢になるべく見せないようにわからないようにしてみる。
うん。子どもにはよろしくない赤い模様と化粧具合だった、と白髪の彼女は語る。
。°。°。°。°。°。°。°。°。
「それは俗に言う血化しょ」
「娘。螢がいるのだぞ?」
「あははー。ごめんなさーい」
居間の卓でもくもくと食事を進めながら、ゆるーくそう言った若草色の髪を持つ(見た目)少女にぴしゃりと白髪の彼女はそれ以上の発言を封じた。
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